リムパーザによる重篤な貧血の発症を予測できる方法を発見

2022/11/10

文:がん+編集部

 治療開始前に赤血球数などの赤血球パラメータやBRCA1/2遺伝子変異を測定することで、オラパリブ(製品名:リムパーザ)による重篤な貧血の発症を事前に察知できる方法が発見されました。

重篤な貧血の高リスク患者さんの早期発見と治療マネジメントにつながる可能性

 慶應義塾大学は2022年10月25日、治療開始前の赤血球パラメータ(赤血球数、ヘマトクリットあるいはヘモグロビン)およびBRCA1/2変異を測定することで、オラパリブによる重篤な貧血発症を事前に察知できる方法を発表しました。同大学大学院薬学研究科博士課程の田代亮太大学院生、同大学薬学部の河添仁准教授、中村智徳教授、国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、国立国際医療研究センター病院らの研究グループによるものです。

 オラパリブは、乳がんや卵巣がんなどさまざまながんに対する治療薬として使われていますが、副作用の1つである貧血は発症率および重症率が高く、どのような患者さんに起こりやすいのかということはわかっていませんでした。

 研究グループは、オラパリブによる重篤な貧血発症と、オラパリブによる治療開始前の赤血球パラメータおよび BRCA1/2変異が相関するのではないかという仮説を検証するために、乳がんおよび卵巣がん治療として、オラパリブ単剤療法を1回以上行った患者さんを対象に診療録を後ろ向きに調査。対象となった患者さん113人中37人(32.7%)が、グレード3以上の重篤な貧血を発症していました。次に、重篤な貧血発症とオラパリブ開始前の赤血球パラメータの関連性を検証し解析したところ、有意な相関が認められました。また、BRCA1/2遺伝子変異陽性も重篤な貧血発症と有意な相関が認められました。

 研究グループは結論として、次のように述べています。

 「オラパリブ開始前の赤血球パラメータおよび BRCA1/2 変異陽性が重篤な貧血発症と相関することがわかりました。私たちが立てた仮説が支持され、オラパリブ開始前の赤血球パラメータおよびBRCA1/2変異陽性がオラパリブによる重篤な貧血発症を予測できることが示唆されました。本研究成果は、オラパリブ療法による重篤な貧血を事前に察知できる可能性を示唆するものであり、高リスク患者の早期発見とその治療マネジメントに繋がるものと考えております」