サシツズマブ ゴビテカン-hziy、治療歴のあるHR陽性HER2陰性転移性乳がんに対する効能・効果でFDAが承認

2023/03/14

文:がん+編集部

 サシツズマブ ゴビテカン-hziyが、治療歴のあるHR陽性HER2陰性転移性乳がんに対する効能・効果について、米国食品医薬品局(FDA)より承認されました。

サシツズマブ ゴビテカン-hziy、化学療法と比較して死亡リスクを21%低下

 米ギリアド・サイエンシズ社は2023年2月3日、治療歴のあるHR陽性HER2陰性転移性乳がんに対する効能・効果について、サシツズマブ ゴビテカン-hziyがFDAから承認されたことを発表しました。今回の承認は、TROPiCS-02試験の結果に基づくものです。

 TROPiCS-02試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬および転移性疾患に対して2~4つの化学療法による治療歴のあるHR陽性HER2陰性の転移性乳がん患者さん543人を対象に、医師が選択した化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)とサシツズマブ ゴビテカン-hziyを比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、客観的奏効率、クリニカルベネフィット率、奏効期間、安全性、忍容性、生活の質などでした。

 解析の結果、サシツズマブ ゴビテカン-hziyは化学療法と比較して死亡リスクを21%低下。それぞれの全生存期間の中央値は、14.4か月と11.2か月でした。また、無増悪生存期間の中央値は、それぞれ5.5か月と4.0か月で、病勢進行または死亡リスクを34%低下しました。さらに、サシツズマブ ゴビテカン-hziyは、客観的奏効率、悪化までの時間などの副次評価項目も有意に改善しました。

 安全性に関しては、これまでに認められている安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。最も高頻度に発現した重篤な副作用は、下痢(5%)、発熱性好中球減少症(4%)、好中球減少症(3%)、腹痛、大腸炎、好中球減少性腸炎、肺炎および嘔吐(それぞれ2%)でした。最も多く認められたグレード3~4の臨床検査値異常は、好中球および白血球の減少でした。サシツズマブ ゴビテカン-hziyを投与された患者さんで、間質性肺疾患は認められませんでした。

 サシツズマブ ゴビテカン-hziyは、抗Trop-2抗体とトポイソメラーゼI阻害薬である「SN38」を結合させた抗体薬物複合体です。Trop-2は、乳がんおよび膀胱がんの90%以上を含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原です。この組み合わせにより、Trop-2発現細胞と微小環境の両方に強力な活性をもたらすことで、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。

 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校Helen Diller Family Comprehensive Cancer Centerの医学教授兼乳がん・臨床試験教育ディレクターでTROPiCS-02試験の治験責任医師のホープ・S・ルーゴ医師は、次のように述べています。

 「何十年にもわたる進歩にもかかわらず、治療歴のあるHR陽性/HER2陰性転移性乳がん患者さんは、新たな治療選択肢を必要としています。このタイプの乳がん患者さんのほぼ全員が、最終的に内分泌療法をベースとする治療に抵抗性を示すようになり、適応可能な化学療法に移行します。今回の承認は乳がんコミュニティにとって大切なマイルストーンです。内分泌療法および化学療法後の患者さんに提供できる選択肢は限られており、このような女性に対して、生活の質にベネフィットをもたらす臨床的意義のある3カ月以上の延命効果が認められたことは素晴らしいことです」