エンハーツ、切除不能な進行期および再発子宮がん肉腫に対する治療薬として有効性を確認

2023/04/28

文:がん+編集部

 希少かつ難治性がんである子宮がん肉腫の切除不能、進行期および再発の患者さんに対して、トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)による抗HER2療法の有効性が、世界で初めて確認されました。

エンハーツ、標準治療以降の薬物療法に関する報告と比較し良好な結果

 国立がん研究センターは2023年4月10日、HER2陽性の子宮がん肉腫の患者さんに対し、トラスツズマブ デルクステカンの有効性を評価するSTATICE試験の結果を発表しました。

 STATICE試験は、HER2陽性で化学療法歴のある切除不能な子宮がん肉腫患者さん84人を対象に、トラスツズマブ デルクステカンを評価する第2相医師主導試験です。主要評価項目は奏効率、副次的評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、安全性などでした。

 試験に参加した84人中56人にHER2タンパクの発現が認められ、その内HER2タンパク高発現の患者さん22人とHER2タンパク低発現患者さん10人に対し、トラスツズマブ デルクステカンが投与されました。

 解析の結果、主要評価項目である画像中央判定での奏効率(腫瘍が30%以上縮小する確率)は、HER2タンパク高発現54.5%、HER2タンパク低発現70%でした。副次評価項目である無増悪生存期間と全生存期間の中央値はそれぞれ6.7か月と15.8か月で、子宮がん肉腫の標準治療以降の薬物療法に関する報告と比較し、良好な結果であることが確認されました。また、副作用については既にトラスツズマブ デルクステカンが保険適用となっている乳がんや胃がんにおける報告と相違のない結果でした。

 また、本試験に参加され腫瘍の縮小を認めた患者さん2人の腫瘍組織から作製されたPDXモデルでも、PDXにおけるトラスツズマブ デルクステカンの薬理効果と患者さんのSTATICE試験での治療効果を比較。患者さんAでは肝臓の病変が治療開始後より著明に縮小が得られ、PDXにおいてもトラスツズマブ デルクステカンにより腫瘍がほぼ消失し有効性が確認されました。患者さんBでは治療により肝臓の病変が一旦縮小したものの、患者さんAと比べ短期間で病変の増大が認められ、患者さんAと比べ縮小効果は小さく、患者さんにおける治療効果と相関していることが確認されました。

 同研究センターは展望として、次のように述べています。

 「本医師主導治験により、HER2タンパクの発現を有する子宮がん肉腫患者さんにおいて、トラスツズマブ デルクステカンが新たな治療選択肢となり得ることが示されました。また、PDXモデルでの非臨床試験の結果により、PDXモデルで実際の患者さんでの治療効果を精緻に予測できる可能性が示され、患者さんが少なく大規模な臨床試験の実施が困難ながんでの新しい治療法の開発に役立つことが期待されます」

※免疫による拒否反応を起こさせないようにするため、人工的に重度免疫不全状態としたマウスに患者さんから採取した組織を移植したマウスモデル