CAR-T細胞療法「アベクマ」、2つ以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫の効能・効果について国内申請

2023/05/08

文:がん+編集部

 2つ以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫の効能・効果について、CAR-T細胞療法「イデカブタゲン ビクルユーセル(製品名:アベクマ)」の国内申請が行われました。

アベクマ、標準治療と比較して病勢進行または死亡リスクを51%低下

 ブリストルマイヤーズスクイブ社は2023年4月17日、CAR-T細胞療法イデカブタゲン ビクルユーセルについて、「免疫調節剤、プロテアソーム阻害薬、抗CD38モノクローナル抗体を含む2つ以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫」の効能または効果の追加に係る再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことを発表しました。今回の承認申請は、KarMMa-3試験(BB2121-MM-003 試験)の中間解析結果に基づくものです。

 KarMMa-3試験は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38モノクローナル抗体を含む2~4レジメンの前治療歴があり、直近の治療に難治性であった再発および難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、イデカブタゲン ビクルユーセルと標準治療を比較した第3相試験です。標準治療は、「ダラツムマブ+ポマリドマイド+デキサメタゾン(DPd)、「ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DVd)」、「イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(IRd)」、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)」、「エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(EPd)」の中から選択されました。主要評価項目は無増悪生存期間、主な副次評価項目は奏効率、全生存期間などでした。

 解析の結果、イデカブタゲン ビクルユーセルは標準治療と比較して、病勢進行または死亡リスクを51%低下。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ13.3か月と4.4か月でした。

 また、副次的評価項目である奏効率は、イデカブタゲン ビクルユーセルが71%、そのうち完全奏効または厳格な完全奏効が39%でした。標準治療の奏効率は41%で、完全奏効または厳格な完全奏効が5%でした。イデカブタゲン ビクルユーセルによる奏効は持続的で、奏効持続期間中央値は、それぞれ14.8か月と9.7か月でした。

 安全性に関しては、これまでに認められている安全性プロファイルと一貫性しており、新たな安全性シグナルはなく、ほとんどが低グレードのサイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性の発現でした。グレードを問わないCRSが88%で認められ、4%の患者さんでグレード3または4、グレード5のCRSが1%で認められました。CRS発現までの期間の中央値は1日(範囲:1~14日)で、CRSの持続期間中央値は3.5日(範囲:1~51日)でした。グレードを問わない神経毒性は15%で認められ、グレード3または4の神経毒性が3%でしたが、グレード5は認められませんでした。神経毒性発現までの期間の中央値は3日(範囲:1~317日)で、神経毒性の持続期間中央値は2日(範囲:1~31日)でした。

 同社研究開発本部長の杉田真氏は、次のように述べています。

 「弊社では、深刻な病気を抱える日本の患者さんにいち早く新たな治療選択肢をお届けするため、開発中のほぼすべての国際共同臨床試験に参加し、グローバルで同時開発、同時申請を行っています。今回のアベクマの承認申請についても、米国および欧州との同時申請を達成できたことを嬉しく思います。日本においても2つ以上の前治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の患者さんに、より早期に、そして米国や欧州から遅れることなく、CAR-T細胞療法という選択肢を提供できるようになることを期待しています」