RAS遺伝子野生型大腸がんに対し「mFOLFOX6 +ベクティビックス」を評価したPARADIGM試験の結果を発表

2023/05/10

文:がん+編集部

 RAS遺伝子野生型(変異のない)かつ化学療法未治療の切除不能な進行再発大腸がん患者さんを対象に、「mFOLFOX6 +パニツムマブ(製品名:ベクティビックス)」併用療法を評価したPARADIGM試験の結果を発表。「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法は、「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」併用療法と比較して、全生存期間の統計学的有意な改善が認められました。

「mFOLFOX6 +ベクティビックス」、「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」と比較して左側原発巣の大腸がんの死亡リスクを18%低下

 横浜市立大学は2023年4月19日、RAS遺伝子変異のない進行再発大腸がん患者さんに対する適切な治療を検証したPARADIGM試験の結果を発表しました。

 PARADIGM試験は、RAS遺伝子変異のない化学療法未治療の切除不能な進行再発大腸がん患者さんを対象に、「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法と「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」併用療法を比較した第3相試験です。

 主要評価項目は、原発巣が左側の患者さんに対する全生存期間とし、パニツムマブの優越性が検証された場合には、全患者さんに対してもパニツムマブの全生存期間における優越性を検証することとされました。

 解析の結果、主要評価項目の原発巣が左側の患者さんにおける全生存期間の中央値は、「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法37.9か月、「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」併用療法34.3か月で、死亡リスクが18%低下、統計学的に有意な延長が認められました。RAS遺伝子変異のない原発巣が左側である大腸がん患者さんを対象とした前向きの臨床試験で、抗VEGF抗体薬に対する抗EGFR抗体薬の優越性を示したのは世界初です。

 また、全患者さんに対する全生存期間の中央値は、「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法36.2か月、「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」併用療法31.3か月で、死亡リスクが16%低下、統計学的に有意な延長が認められました。

 安全性に関しては、新たな懸念は認められませんでした。「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法では、71.8%の患者さんがグレード3以上の有害事象が認められ、「mFOLFOX6 +ベバシズマブ」併用療法では64.9%が認められました。また、「mFOLFOX6 +パニツムマブ」併用療法では、にきび様皮膚炎、爪周囲炎、乾燥肌、低マグネシウム血症がより多く観察されました。

 研究グループは展望として、次のように述べています。

 「本研究により、RAS遺伝子野生型で原発巣が左側の大腸がん患者さんにおける一次治療の第一選択として抗EGFR抗体薬を用いることが推奨される可能性が示されました。我が国から発信する世界初の明確なエビデンスは、国内外の大腸がん治療ガイドラインに記載され、今後RAS遺伝子野生型の大腸がん患者さんに適切な一次治療を提供できるようになることが期待されます。また、本研究とあわせて、治療反応予測因子、耐性メカニズムを明らかにすることを目的としたPARADIGMバイオマーカー試験(NCT02394834)が進行中です。PARADIGM試験から得られた約800名の日本人大腸がん患者さんの臨床データとバイオマーカーを紐づけた解析によって、大腸がんのさらなる治療成績の向上と薬剤開発の可能性につなげることも期待されます」