各種がんの切除数が2年連続で抑制傾向、コロナ禍の影響が続いている可能性を示唆

2023/05/11

文:がん+編集部

 日本人で患者数の多い10がん種について、2019年度以前と比べた場合、2020年度・2021年度と連続して切除患者数(外科切除+内視鏡切除)が大幅に抑制されていることがわかりました。コロナ禍の影響で、切除可能な早期がん診断が適切に実施できていない可能性が示唆されます。

新規抗がん剤治療患者数は2020年度に減少したものの、2021年度には大きく増加し過去最高

 横浜市立大学は2023年4月19日、日本人で患者数の多い10がん種について、2019年以前と2020年度・2021年度の切除患者数を比較した調査結果を発表しました。2020年度・2021年度はがん切除数が大幅に減少しましたが、2021年の新規抗がん剤治療数は、過去最高になっていました。同大学附属病院化学療法センターの堀田信之センター長らの研究グループによるものです。

 研究グループは、全国のがん患者の7割をカバーする、院内がん登録の全国集計データを解析し、日本人で患者数の多い10がん種(食道がん・胃がん・結腸がん・直腸がん・膵がん・非小細胞肺がん・乳がん・膀胱がん・前立腺がん・子宮頚がん、以下10大がん)について調査を実施。2020年度には、10大がんの新規患者数が大幅に減少しましたが、2021年度にはほぼ2019年度と同数となりました。

 治療別では、新規抗がん剤治療患者数は2020年度に減少しましたが、2021年度には大きく増加し、過去最高数となった一方で、手術切除患者数・内視鏡切除患者数は2020年度に大幅に減少し、2021年度にも2019年の水準を下回りました。

 がん切除患者数の減少は、「コロナ禍による医療機関へのアクセス悪化」「健康診断中止」「受診控えによる早期がん診断数低下」に起因すると考えられます。

 研究グループは今後の展望として、次のように述べています。

 「早期がんの切除は根治を目指せる重要な治療法となり、低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)などのマススクリーニングは死亡リスクを減少させることが以前から知られています。そのため、感染対策がなされていることが前提ではありますが、本研究が健康診断実施・受診の促進につながれば良いと考えます」