食道がんの予後マーカーを発見

2023/05/30

文:がん+編集部

 食道がんの予後マーカーと、術後再発に対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を事前に予測する方法が発見されました。

食道がんの術後再発に対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測を可能に

 大阪大学は2023年5月15日、食道がんの辺縁部に後天的に形成される三次リンパ様構造(TLS)とよばれる異所性リンパ器官を評価することで、手術後の生命予後を予測し得ることを発見したと発表しました。同大学大学院医学系研究科の林芳矩招へい教員、牧野知紀助教、土岐祐一郎教授らの研究グループによるものです。

 食道がんは、手術の後にも高い割合で再発を来す予後不良の難治性がんの1つです。また、食道がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は10~20%と低いことから、治療戦略を立てる上で治療効果予測方法の確立が重要な課題となっています。

 研究グループは、術前無治療で根治切除を受けた食道がん患者さん316人の切除標本を用いて、腫瘍辺縁に存在するTLSの発現量(密度)と成熟性を定量的に評価。TLSの発現および成熟性が腫瘍進行度とは独立して予後を強く規定することを明らかにしました。とくに成熟したTLSでこの傾向が強く、これには成熟TLSを構成するCD138陽性形質細胞が関与している可能性が示唆されました。さらに、初回手術時の切除標本におけるTLSを評価することで、術後再発をきたした際に免疫チェックポイント阻害薬が効果的かどうかの予測に役立つことを明らかにしました。

 研究グループは本研究成果の意義として、次のように述べています。

 「本研究成果により、腫瘍辺縁に存在するTLSが食道がんにおける予後やがん免疫治療の重要なバイオマーカーとなることが示されました。今後免疫チェックポイント阻害薬投与前にTLSを誘導するなど、TLSを標的とした治療開発にも貢献できる可能性が期待されます」