難治性小細胞肺がんの新たな治療法を発見

2023/09/05

文:がん+編集部

 小細胞肺がんの難治性に関わる悪性化メカニズム解明により、難治性小細胞肺がんの新たな治療法が発見されました。

「6-MP+MTX+MSO」3剤併用療法、既存治療の効能より優れる可能性

 九州大学は2023年8月7日、難治性小細胞肺がんの新たな治療法を発見したことを発表しました。同大生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授、小玉学助教、大学院消化器・総合外科の吉住朋晴教授、豊川剛二医師の研究グループによるものです。

 小細胞肺がんは、全てのがん種の中でも予後不良であり非常に悪性度が高いがん種です。しかし、約40年前に確立された既存の化学療法の効能を超越する効果的な治療法が存在しないことから、新たな治療法の確立が望まれていました。

 研究グループは、独自に開発した解析技術によりヒト小細胞肺がんの悪性化過程の網羅的代謝酵素の発現変化を追跡。その結果、小細胞肺がんでは、DNAとRNAのもととなる核酸の合成を促す代謝酵素のうち「HPRT1」の発現上昇が顕著に生じていることを発見しました。

 これらの結果から研究グループはHPRT1を阻害する抗がん剤「6-MP」を患者由来小細胞肺がんを移植したマウスに投与したところ、腫瘍の増殖を効果的に抑えることが明らかになりました。6-MPに加え、DNAとRNAの新規合成経路を阻害する抗がん剤である「MTX」と、新規核酸合成に必須の栄養基質であるグルタミン合成阻害薬「MSO」を併用したところ、腫瘍抑制効果が飛躍的に増強することを突き止めました。この3剤併用療法は、既存の治療効能を超越する可能性を秘めた小細胞肺がん患者さんの新たな治療法となることが期待されます。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究は、予後不良な小細胞肺がんの効果的治療の創出を目的として実施されました。がん細胞の増殖はDNA、RNA合成速度が律速となっているため、特に宿主体内での増殖が早く悪性性が高い小細胞肺がんの効率的な核酸合成阻害は実臨床で既存療法を超える治療効果をもたらす可能性が期待されます」