ICGを用いた腸管血流の蛍光観察、直腸がん術後合併症の予防効果を臨床試験で確認

2023/10/19

文:がん+編集部

 インドシアニングリーン(ICG)を用いた腸管血流の蛍光観察が、直腸がんの術後合併症である縫合不全の発生率を低下させることが臨床試験で確認されました。

ICGによる蛍光観察を実施した患者グループの縫合不全発生率は7.6%、実施しない患者グループは11.8%

 横浜市立大学は2023年9月13日、ICGを用いた蛍光観察による腸管血流の評価が、直腸がんの縫合不全発生率を低下させたEssentiAL試験について、その論文が、科学雑誌「Annals of Surgery」に掲載されたことを発表しました。同大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科の渡邉純准教授、札幌医科大学医学部消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座の竹政伊知朗教授らの研究グループによるものです。

 EssentiAL試験は、腹腔鏡手術(ロボット支援手術も含む)を受ける直腸がん患者さん850人を対象に、ICGを用いた蛍光観察による腸管血流評価を実施した患者グループと蛍光観察を実施しない患者グループを比較した第3相試験です。この試験では、研究者らが共同でコンセプトや試験計画を立案し、全国41施設の協力のもと実施されました。主要評価項目は、縫合不全発生率でした。

 解析の結果、蛍光観察を実施した患者グループの縫合不全発生率は7.6%、実施しない患者グループは11.8%で、統計学的な有意差が認められました。また、再手術率も蛍光観察を実施した患者グループで0.5%、実施しない患者グループで2.4%と、統計学的に有意差が認められました。安全性に関しては、ICG投与による有害事象は認められませんでした。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究により、ICGを用いた蛍光観察による腸管血流評価を用いることで、より多くの患者さんの直腸がん術後縫合不全を予防できることが期待されます。縫合不全の予防は、重症感染症による入院期間の延長や人工肛門造設による生活の質の低下を防ぐことが期待できます。また、我が国から発信する世界初の明確なエビデンスによって、本方法が直腸がん術後縫合不全予防に対する標準治療となることが期待されます」