がん患者さんに多く見られる「がん悪液質」に特徴的な代謝異常を発見
2023/11/17
文:がん+編集部
がん患者さんに多く見られる「がん悪液質」に特徴的な代謝異常が発見されました。がん悪液質の予防や治療法の開発が期待されます。
がん悪液質の重症度、肝臓内のビタミンB3とビタミンB6濃度が相関して低下
愛知県がんセンターは2023年10月17日、がん悪液質の特徴的な代謝異常を発見し、研究成果が英国科学雑誌Nature Communicationsで公開されたことを発表しました。同がんセンターがん病態生理学分野の青木正博分野⾧、小島康主任研究員、薬物療法部の室圭部⾧、慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授らを中心とする研究グループによるものです。
がん悪液質は、全身的な代謝異常と考えられていますが、発症の仕組みはいまだに解明されておらず、有効な予防・治療法も見つかっていません。
研究グループは、さまざまな重症度のがん悪液質を発症する複数のマウスモデルの骨格筋と肝臓の代謝物やタンパク質を解析。肝臓内のビタミンB3「ナイアシン」とビタミンB6の濃度、これらのビタミンBを利用する酵素タンパク質の濃度が、がん悪液質の重症度と相関して低下していることを発見しました。
この研究成果が、がん悪液質に対する新たな治療法や予防策を開発する土台となり、がん患者さんのQOLと生存率の向上につながることが期待されます。
研究グループは、今後の展望として、次のように述べています。
「悪液質に伴う代謝異常の背後には、肝臓のビタミンBを利用する酵素タンパク質群が減少するという大きな特徴があることを見出しました。今後は、ビタミンBを利用する酵素タンパク質がどうして減少するのか、その減少が悪液質の発症にどのように関与するのか、そしてこれらを増やすことが悪液質の予防や治療にどう寄与するかなどを調べていきたいと考えています」