早期胃がん、異所性異時性再発の原因メカニズムの一端を解明

2024/01/24

文:がん+編集部

 早期胃がんの異所性異時性再発の原因として、ピロリ菌除去後の背景胃粘膜の炎症の継続が関与するメカニズムの一端が解明されました。

早期胃がん内視鏡治療後かつピロリ菌除菌後の患者さんに対する適正なフォロー方法や再発予防の創薬につながる可能性

 千葉大学は2023年12月12日、早期胃がんの異所性異時性再発の原因の一端を解明したことを発表しました。同大大学院医学研究院の長島有輝特任助教、中川良特任准教授、加藤直也教授、同大医学部附属病院の沖元謙一郎助教らの研究グループによるものです。

 胃がんの主な原因は、ピロリ菌感染による慢性の胃粘膜障害で、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生リスクを低減させることができます。一方、早期胃がんに対して内視鏡治療で治癒が得られ、ピロリ菌の除菌に成功した場合でも、5~15%程度の人が胃がんの異所性異時性再発を来すことがあり、このメカニズムの詳細はわかっていませんでした。

 研究グループは、早期胃がんの内視鏡治療後にピロリ菌除菌を行った患者さんの背景胃粘膜を採取し、再発患者さんと再発していない患者さんの内視鏡検査時に得られた所見と遺伝子発現を比較。その結果、内視鏡所見の比較では、胃粘膜の大弯襞(だいわんひだ)の腫大が多く見られることが示されました。通常、大弯襞の腫大はピロリ菌の除菌によって改善しますが、再発患者さんではその腫大が継続していました。

 さらに、遺伝子発現解析では、再発患者さんと再発していない患者さんのmRNAやmiRNAの発現パターンに違いがあることがわかりました。このパターンの違いの詳細を知るため、さらに別の解析を行ったところ、再発患者さんの胃粘膜では、IFN-αシグナル伝達経路を含む免疫や炎症にかかわる複数のシグナル伝達経路が亢進していることがわかりました。

 これらのことから、再発患者さんはピロリ菌除菌後であっても、内視鏡所見的にも遺伝子発現的にも背景粘膜に炎症像が見られることが示され、さらにその炎症の制御メカニズムをIFN-αシグナル伝達経路が担っている可能性が示されました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究成果により、早期胃がん内視鏡治療後かつピロリ菌除菌後の患者さんにおける、より適正なフォロー方法や、再発予防の創薬につながることが期待されます」