トリプルネガティブ乳がんの発症メカニズムの一部を解明

2024/04/15

文:がん+編集部

 トリプルネガティブ乳がんの発症メカニズムの一部が解明されました。新たな診断マーカーや治療法の開発が期待されます。

トリプルネガティブ乳がんの新たな治療標的や診断マーカーになり得るタンパク質を発見

 広島大学は2024年2月19日、トリプルネガティブ乳がんの発症メカニズムの一部を解明したことを発表しました。同大大学院医系科学研究科分子細胞情報学の伊藤泰智氏(医学部医学科学生)、齋藤敦准教授、今泉和則教授らの研究グループによるものです。

 ホルモン受容体陽性乳がんやHER2陽性乳がんでは、治療の標的となる物質が発見されています。しかし、トリプルネガティブ乳がんは、まだ発症メカニズムの全容が不明で、明確な治療標的が見つかっておらず、明らかな効果が認められる治療法が確立されていません。そのため、トリプルネガティブ乳がんに対する有効な診断マーカーや治療標的の確定、それらを基にした根本的な治療戦略の確立が求められています。

 研究グループは、前立腺がん細胞で発現しているタンパク質「AIbZIP」について、他のがん細胞で発現していないかを調べる研究を行い、トリプルネガティブ乳がんでもAIbZIPの発現量が増加していることを発見しました。また、遺伝子操作によりAIbZIPの発現量を低下させると、トリプルネガティブ乳がん細胞の増殖速度が低下することが判明しました。さらに、AIbZIPが細胞周期を抑制するタンパク質「p27」を分解するシステムを活性化することで、トリプルネガティブ乳がん細胞を過剰に増殖させるメカニズムが明らかになりました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「トリプルネガティブ乳がんに対する有効な治療方法はまだ存在しません。本研究の結果から、AIbZIPがトリプルネガティブ乳がん細胞の増殖を促進する新しいメカニズムが明らかになりました。AIbZIPの量や機能をコントロールすることができれば、トリプルネガティブ乳がんの新規治療法の開発につながることが期待されます。また、AIbZIPの発現量を調べることでトリプルネガティブ乳がんの早期発見や診断が可能となります。AIbZIPはトリプルネガティブ乳がん以外にも前立腺がんなどでその量が増加しています。AIbZIPを標的とするがんの診断・治療はまだ確立されておらず、これまでの治療戦略とは全く異なったアプローチになります。したがって、今回の成果がトリプルネガティブ乳がんだけに留まらず、さまざまながん種の発症や増悪に至る仕組みの解明につながり、新規治療戦略の確立にも発展する可能性があります」