大腸がんの腹膜播種に対する完全減量手術の安全性を評価する治験を開始
2024/04/16
文:がん+編集部
有効な治療法がない腹膜播種を伴う大腸がんの標準治療の確立を目的に、大腸がんの腹膜播種に対する積極的切除を評価する治験が開始されました。
有効な治療法がない腹膜播種を伴う大腸がんの標準治療の確立を目指す
国立がん研究センターは2024年3月14日、有効な治療法が明らかでない大腸がんの腹膜播種に対する臨床試験を開始することを発表しました。
一般的に大腸がんの転移に対する治療では、手術できる場合は切除、難しい場合は薬物療法や放射線治療などが行われます。腹膜播種は、腹腔内に病変が散在しているため手術や放射線治療は難しいとされ、全身化学療法が唯一の方法として行われてきました。しかし、腹膜播種に対する抗がん剤の効果は限定的で、腹膜播種に特化した効果的な治療法の開発が求められています。
完全減量手術は、大腸がんの腹膜播種に対して考案された手術法で、腹腔内に広がった播種病変を全て切除し、視認できる病変を完全に除去することを目指す方法です。生存期間の延長が示唆されており、欧米を中心に取り組んでいる施設がありますが、侵襲が大きく難易度が高いため合併症が懸念されています。また、抗がん剤が著しく進歩する中、現在の全身化学療法と比べて、完全減量手術の実施がどの程度生存期間を延長するのかは明らかになっていません。
今回開始される、完全減量手術の安全性に関する臨床試験「腹膜播種を伴う大腸がんに対する完全減量手術の安全性に関する研究」の概要は、以下の通りです。
- 適格条件
- 大腸がん腹膜播種と診断された75歳以下の成人
- 全身麻酔下での手術に問題がなく、当院での検査によって腹膜播種が手術で取り切れると判断された患者さん
- 登録予定数
- 20人
- 主要評価項目
- グレード3以上の重篤な周術期有害事象発生割合
- 副次的評価項目
- 周術期有害事象発生割合
- 手術合併症発生割合
- 腹膜播種完全切除達成割合
- 研究期間
- 2024年4月から3年間の予定
同センターは展望として、次のように述べています。
「今回の臨床試験を通じて、大腸がん腹膜播種に対する完全減量手術が日本において一般的な治療として実施できるものかどうかを科学的に初めて評価し、将来的には腹膜播種に対する標準治療の確立を目指します」