標的α線治療薬「[211At] 1」の副作用を軽減する新たな手法の開発に成功

2024/06/10

文:がん+編集部

 標的α線治療薬「[211At]1」の副作用を軽減するための新たな手法が開発されました。効果的で副作用の少ないα線治療への応用が期待されます。

がん選択的な集積性・治療効果を維持しつつ副作用を低下させる手法として、他のアルブミン結合部位含有の薬剤への応用も期待

 金沢大学は2024年4月18日、標的α線治療のがん選択的な治療を可能とする手法を開発したことを発表しました。同大学新学術創成研究機構の小川数馬教授、三代憲司准教授、大学院医薬保健学総合研究科薬学専攻博士課程3年の越後拓亮氏、医薬保健研究域薬学系の淵上剛志准教授、宗兼将之助教、福島県立医科大学の高橋和弘教授、鷲山幸信准教授、金沢大学附属病院核医学診療科の絹谷清剛教授、若林大志講師らの共同研究グループによるものです。

 これまでに研究グループは、血液中のアルブミンと結合する211Atを標識した薬剤「[211At]1」を開発し、マウス実験で、「[211At]1」ががんに高く集まり、がんの増殖を抑制することを示してきました。しかし、「[211At]1」が血液中に長く滞留することから副作用が懸念されていました。

 今回、十分量の「[211At]1」をがんに運んだ後、「[211At]1」と血中アルブミンとの結合を切る化合物を追加で投与することで、「[211At]1」のがんへの選択性が改善可能かを検討。その結果、「[211At]1」は血液中に滞留することなくがん以外の正常な組織からも速やかに排泄される一方で、がんへの集積はあまり低下せず、がんの増殖が抑制されました。

 このことから本研究をさらに発展させることにより,標的α線治療のさらなる効果増大や副作用の低下につながることが期待されます。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本手法を他のアルブミン結合部位を含有した薬剤に応用することにより、がん選択的な集積性、治療効果を維持しつつ、副作用を低下させることが可能と期待されます」