HER2陽性胃がんに対するエンハーツの治療効果、バイオマーカー研究結果を発表

2024/06/11

文:がん+編集部

 HER2陽性胃がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)のHER2発現や各種遺伝子異常と治療効果との関連を検討するバイオマーカー研究を実施。奏効例の特徴や抵抗性に関与するメカニズムが示唆されました。

エンハーツ、HER2高発現や血中循環腫瘍DNAのHER2増幅を認める患者さんで奏効割合が高い傾向

 国立がん研究センターは2024年5月20日、HER2陽性胃がんに対するトラスツズマブ デルクステカンのバイオマーカー研究の結果を発表しました。同研究センター東病院消化管内科の設楽紘平科長らの研究グループによるものです。

 研究グループは、HER2陽性胃がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの治療による利益が得られる可能性が高い患者さんを特定するために、DESTINY-Gastric01試験に参加した患者さんから採取した腫瘍検体や血液検体から、血中循環腫瘍DNAを解析し、遺伝子発現や遺伝子異常と治療効果との関連を検討するバイオマーカー研究を実施。

 その結果、腫瘍検体におけるHER2発現が高い患者さんや血液検体による血中循環腫瘍DNAのHER2増幅を認める患者さんで、奏効割合が高い傾向が認められました。また、HER2機能獲得変異が11%で検出され、HER2が高発現かつHER2変異陽性では、8人中7人で奏効が認められました。

 その一方で、血中循環腫瘍DNAにおける他の主要なドライバー遺伝子の増幅、特にMET、EGFR、FGFR2が検出された患者さんの奏効割合は比較的低い値でした。

 また、治療終了時にHER2遺伝子増幅検出例の減少や新規のTOP1遺伝子異常が検出された例が確認され、これらがトラスツズマブ デルクステカンの抵抗性獲得に関わっている可能性が示唆されました。

 研究グループは展望として、次のように述べています。

 「本研究の結果、HER2陽性胃がんに対してトラスツズマブ デルクステカンを投与する際に腫瘍検体や血液検体によるリキッドバイオプシーの検討により、効果が高く期待される患者さんが同定される可能性が示唆されました。同時に薬剤耐性の機序の一端が明らかとなり、今後さらなる治療開発に役立つことが期待されます」