前治療歴のないマントル細胞リンパ腫を対象に、「カルケンス+BR療法」を評価したECHO試験の結果
2024/08/06
文:がん+編集部
前治療歴のないマントル細胞リンパ腫を対象に、「アカラブルチニブ(製品名:カルケンス)+BR療法(ベンダムスチン+リツキシマブ)」を評価したECHO試験の結果を発表。統計学的に有意な無増悪生存期間の改善が認められました。
「カルケンス+BR療法」、BR療法と比較して病勢進行または死亡リスクを27%低減
アストラゼネカは2024年6月16日、ECHO試験の結果を発表しました。
ECHO試験は、前治療歴のない65歳以上の成人マントル細胞リンパ腫患者さん598人を対象に、「アカラブルチニブ+BR療法」とBR療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、主な副次評価項目は全生存期間、全奏効率、奏効期間、奏効までの期間などでした。
主要評価項目である無増悪生存期間の解析の結果、「アカラブルチニブ+BR療法」はBR療法と比較して病勢進行または死亡リスクを27%低減。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ「アカラブルチニブ+BR療法」66.4か月、BR療法49.6か月でした。また、副次的評価項目の全生存期間の解析でも、「アカラブルチニブ+BR療法」はBR療法と比較して良好な傾向が示されました。
安全性に関しては、これまでに認められている安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。グレード3以上の有害事象は、「アカラブルチニブ+BR療法」88.9%、BR療法88.2%で認められました。グレード3以上の心房細動がそれぞれ3.7%と1.7%、グレード3以上の高血圧が5.4%と8.4%、グレード3以上の大出血が2.0%と3.4%、グレード3以上の感染症が41.1%と34.0%が含まれました。重篤な有害事象(69%と62%)およびグレード5の有害事象(12.1%と10.1%)は同程度でした。投与中止に至った有害事象は、「アカラブルチニブ+BR療法」10.4%とBR療法6.4%に認められました。本試験では、「アカラブルチニブ+BR療法」89.4%とBR療法6.7%に発現したグレード5の事象を含め、COVID-19に関連する有害事象が認められました。
米国ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターのPuddin Clarke寄附講座の教授で、マントル細胞リンパ腫プログラムオブエクセレンスのディレクター、および臨床試験共同ディレクターであり、本試験の治験責任医師であるMichael Wang医学博士は、次のように述べています。
「典型例で悪性度の高い形態を示す非ホジキンリンパ腫の一種であるマントル細胞リンパ腫の患者さんにとって、ECHO試験の結果は、マントル細胞リンパ腫患者さんの大半を占める65歳以上の成人患者さんに対する新たな効果的な治療選択肢として期待されます。カルケンス併用療法を受けた患者さんにおいて化学免疫療法と比較して認められた無増悪生存期間の改善は、マントル細胞リンパ腫の一次治療における唯一のBTK阻害薬として、標準治療を変える可能性を示しています」