進行期乳房外パジェット病を対象に抗アンドロゲン療法を評価するための医師主導治験を開始
2024/10/07
文:がん+編集部
進行期乳房外パジェット病に対する内分泌療法として、「抗アンドロゲン薬±LH-RH アゴニスト」の有効性と安全性を評価するための医師主導治験が開始されました。
抗アンドロゲン療法、乳房外パジェット病に対する安全性の高い新たな治療法として期待
慶應義塾大学は2024年8月30日、進行期乳房外パジェット病を対象に、「抗アンドロゲン薬±LH-RH アゴニスト」の有効性と安全性を評価するための医師主導治験を国内7施設で開始したことを発表しました。
乳房外パジェット病は、外陰部などに生じる皮膚がんで、皮膚に限局している場合は外科的切除が第一選択ですが、肺や肝臓など他臓器に転移をきたした場合の標準治療は確立されていません。
乳房外バジェット病は、アンドロゲン受容体の発現率が高いことが知られており、過去の患者さんの検体を用いた研究では、95%を超える患者さんでアンドロゲン受容体が発現していました。また、患者さんから採取した腫瘍細胞を培養した腫瘍オルガノイドを使った実験では、アンドロゲン受容体シグナル阻害薬であるダロルタミドの添加により濃度依存性に阻害されることが明らかになりました。これらの科学的根拠に基づき、医師主導治験が開始されることとなりました。
今回開始された医師主導試験は、組織学的に確定診断された転移巣がある乳房外パジェット病患者さんを対象に、2つのコホートで構成された第2相試験です。コホート1では、ダロルタミド単剤600mgを1日2回の内服、コホート2ではダロルタミド600mgの1日2回内服に加え LH-RHアゴニストであるゴセレリン酢酸塩3.6mgを4週ごとに皮下注射にて投与し、各々の有効性・安全性が評価されます。主要評価項目は中央判定による奏効率です。
この試験は、新潟県立がんセンター新潟病院、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院、静岡県立静岡がんセンター、名古屋市立大学病院、兵庫県立がんセンター、独立行政法人国立病院機構九州がんセンター、慶應義塾大学病院の国内7施設で実施されています。
同大学は今後の展開として、次のように述べています。
「今回の治験の結果をもとに、進行期乳房外パジェット病に対する内分泌療法の薬事承認を目指しています。適応症例の広さに加えて、高齢者が主体である乳房外パジェット病において安全性の高い新規治療として社会実装されることが期待されます」