【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年3月24日)

2025/03/24

文:がん+編集部

光免疫療法、光感受性色素改良のための新しいプラットフォーム開発

 関西医科大学は2025年3月5日、光免疫療法で使用される光感受性色素「IR700」の誘導体「IR702HKT」の合成方法を確立したことを発表しました。

 IR700は、複雑な構造で化学合成する方法が確立されていませんでした。また、IR700 よりも優れた光感受性色素の報告はなされていなかったため、IR700誘導体の合成方法を開発し、IR702HKTの作成に成功しました。さらに、IR702HKTと抗体を組み合わせた薬剤を調製し、細胞を用いた検討を行ったところ、IR702HKTはIR700と同等の細胞殺傷性を有することが認められました。

 今回の研究の成果は、光免疫療法の光感受性色素を改良するためのプラットフォームとなると考えられます。今後、IR702HKTの化学構造を更に洗練させることで、IR700よりも優れた光感受性色素の創製につながると期待されます。

食道がん術前化学療法中、栄養状態の悪化と歯科的な因子との関連が判明

 岡山大学は2025年2月28日、食道がんの手術前の抗がん剤治療中の「予後推定栄養指数」と「歯科的な因子」との関連を探索的に分析した研究成果を発表しました。

 特に「奥歯のかみ合わせの数が多い患者さん」は、「奥歯のかみ合わせの数が少ない患者さん」よりも栄養状態が大きく悪化していました。詳しく分析した結果、「奥歯の噛み合わせの数が少ない患者さん」は、抗がん剤治療前から口腔内や栄養状態が悪かったために、歯科や栄養の専門家チームが早期から介入していました。

 これらのことから、口腔内や全身の状態に関わらず、全ての患者さんに対して、早期(術前の抗がん剤治療前)から専門家のチームが介入することが理想的であると考えられます。

転移・再発乳がんを対象に、新規抗体医薬「PT0101」を評価する臨床試験開始

 大阪大学は2025年3月6日、十分な治療薬のないHER2陰性の転移・再発乳がんを対象に、新規抗体医薬「PT0101」を評価する臨床試験を開始することを発表しました。

 研究グループは、多数の臨床検体を用いて間葉系マーカーと最も相関する因子を探索し、さまざまな臓器に存在するタンパク質で細胞の増殖や組織の修復に関わる「ペリオスチン」を発見。異常に増加したペリオスチン(病的ペリオスチン)は、がんの進行や治療抵抗性に関与することが報告されています。

 PT0101は、病的ペリオスチンを特異的に中和し、がん細胞とがん間質の両方に作用。抗がん剤が効きにくいがんの新たな治療薬となり得る抗体医薬として開発されました。