ベージニオ、より予後不良の進行乳がんで上乗せ効果を確認

2019/01/31

文:がん+編集部

 より予後不良と考えられる進行乳がんの複数のサブグループに対するアベマシクリブ(製品名:ベージニオ)の上乗せ効果を示す治験の解析結果が発表されました。対象となったすべてのサブグループで上乗せ効果が認められ、特に予後不良とされる患者さんでは、より効果が大きいことが示されたそうです。

予後不良因子のある患者の奏効率、ない患者より30%高く

 イーライリリー・アンド・カンパニーは12月18日、ホルモン陽性、HER2陰性の進行または転移性の乳がん患者さんに対するアベマシクリブ+内分泌療法を評価するMONARCH2試験MONARCH3試験の2つの臨床試験のサブグループ解析結果を発表しました。

 今回のサブグループ解析は1000例を超えるデータを統合し、2段階で行われました。全例の予後因子を特定したのち、試験ごとに特定の予後因子で分けたサブグループで、内分泌療法単独と内分泌療法+ベージニオの治療効果を比較。その結果、ベージニオの上乗せ効果は、すべてのサブグループで認められました。また、この上乗せ効果は、肝転移、骨以外への転移、細胞分裂が盛んなタイプ、ホルモン療法感受性かかわるプロゲステロン受容体の発現がないタイプなど、予後不良因子がある患者さんで大きく、奏効率の差が30%以上あったそうです。

 Celebrating Women Chair in Breast Cancer Researchと乳がん研究プログラムの主任医師を務める、ベイラー大学医療センター、テキサスオンコロジーおよび米国オンコロジーのJoyce O’Shaughnessy医師は「HR+、HER2-転移乳癌患者さんはみな同じではありません。それぞれの患者さんが、様々な異なる組み合わせの臨床的特徴を持っています。その中には、より予後が懸念されるような臨床的特徴を持つ患者さんもいます。したがって各患者個人の病態に沿った治療方針を個別に検討しなければなりません。それぞれの臨床学的因子がどう予後に影響するのか、そして、ベージニオの上乗せ効果が、これらの因子を持つ患者、持たない患者それぞれにどのようなベネフィットをもたらすのかを知ることは、個別化治療を行うに当たって大変役立ちます」とコメントとしています。

 乳がんはサブタイプごとに治療選択が行われていますが、今回の解析によって個別化医療がさらに進み、特に予後不良因子のある患者さんに対して効果的な治療法の研究・開発が進むことが期待されます。

MONARCH2試験

対象:HR陽性、HER2陰性の手術不能または転移性の進行乳がん
条件:補助内分泌療法中、1年以内に再発し、進行後内分泌療法を受けていない。
   補助内分泌療法後1年を超えて再発後、転移巣に対して抗エストロゲンまたはアロマターゼ阻害薬による治療を行った後、2次内分泌療法以降の治療も化学療法も受けていない。
   初回診断時に転移性病変に対して、抗エストロゲンまたはアロマターゼ阻害薬による治療を行った後再発し、2次内分泌療法も化学療法受けていない。
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照
登録数:669人
試験群:アベマシクリブ+フルベストラント
対照群:プラセボ+フルベストラント
主要評価項目:無増悪生存期間※1
副次的評価項目:全生存期間※2、全奏効率※3、奏功期間ほか

MONARCH3試験

対象:HR陽性、HER2陰性の乳がん
条件:転移性で切除不能または放射線療法に適さない局所再発の乳がん患者さん
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照
登録数:493人
試験群:アベマシクリブ+アナストロゾール+レトロゾール
対照群:プラセボ+アナストロゾール+レトロゾール
主要評価項目:無増悪生存期間
副次的評価項目:全生存期間、全奏効率、奏功期間ほか

※1:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※3:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。