がんウイルス療法「テロメライシン」、独占的ライセンス契約および資本提携契約を締結
2019/04/12
文:がん+編集部
がんウイルス療法「テロメライシン」の開発・製造・販売に関して、開発会社オンコリスバイオファーマと中外製薬が契約を締結しました。
がん細胞を特異的に破壊する遺伝子改変アデノウイルス「テロメライシン」
オンコリスバイオファーマ株式会社と中外製薬株式会社は4月8日に、オンコリスが開発中のがんウイルス療法「テロメライシン」に関して、日本と台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンスを中外製薬に付与するライセンス契約を締結したと発表しました。同時に、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション権を中外製薬へ付与するライセンス契約も締結したそうです。
生体に感染したウイルスは細胞の中に入り込んで増殖し、細胞を次々と死滅させます。このウイルスの性質を逆手にとってがん治療に利用するのが、がんウイルス療法です。テロメライシンは、風邪症状を引き起こすウイルスの1つであるアデノウイルスを遺伝子改変することで、がん細胞の中だけで増殖しがん細胞だけを破壊するようにつくられています。現在までに、嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから、患者さんのQOL向上や安全性の面でも期待されています。また、テロメライシンによって破壊されたがん細胞は、樹状細胞などの免疫細胞の抗原となることで、がん免疫が誘導されることも示唆されています。
今回の契約で中外製薬は、オンコリスバイオファーマに対し、契約一時金として5.5億円を支払い、テロメライシンの臨床試験で一定の効果が確認され独占的オプション権を行使した場合、ライセンス料として500億円以上を支払うことになるそうです。さらに、テロメライシンが上市されれば、ライセンス契約総額とは別に、売上額に応じた販売ロイヤリティが支払われます。
オンコリスバイオファーマの浦田泰生社長は「中外製薬は抗体医薬をはじめとするがん治療薬開発のエキスパート企業であり、テロメライシンというがんのウイルス療法を開発していく上で最善のパートナリングが出来たと思います。テロメライシンは日本オリジナルの腫瘍溶解ウイルスであり、我々の食道がんに対する臨床効果を中外製薬から高く評価していただけたことを大変に嬉しく思います。今後、テロメライシンの適応を大きく拡大していただけることを期待したいと思います」と、コメントを発表しました。
中外製薬の小坂達朗CEOは「テロメライシンは、新規の作用機序を有するがんのウイルス療法で、がん患者さんへの新たな価値提供が期待されます。オンコリスが開発した革新的な医薬品を一日でも早く患者さんに届けるとともに、がん免疫療法等との併用も視野に入れ、患者さんやご家族が真の価値を享受できるがん種への適応拡大を図るなど、創出価値を最大化してまいります。また、オンコリスの株主の一員として、中長期的に同社の企業価値、株主価値の向上にも貢献できるものと信じています」と、コメントしています。