がんを可視化、診断・治療につながるペプチド「HiP-8」を発見
2019/05/30
文:がん+編集部
がん細胞の転移や抗がん剤耐性を促進する肝細胞増殖因子(HGF)と特異的に結合するペプチド「HiP-8」が発見されました。HiP-8がHGFと結合する作用により、体内のがん組織を可視化できる上に、HGFの作用を阻害することができます。
がん転移や薬剤耐性を促進するHGFを阻害する分子標的薬の開発にも期待
金沢大学は5月18日に、がん細胞の転移や抗がん剤の薬剤耐性を促進するHGFと結合する環状ペプチド「HiP-8」を発見したと発表しました。同大学がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所/新学術創成研究機構の酒井克也助教、柴田幹大准教授、松本邦夫教授、東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授、理化学研究所生命機能科学研究センターの向井英史ユニットリーダー、渡辺恭良チームリーダーらの共同研究グループによるものです。
HGFは、その受容体のMETが結合することで、組織の成長や再生を促進します。しかし、さまざまながん組織では、HGFががん組織に作用すると、がんの転移や薬剤耐性を促進することがわかっています。
研究グループは、HGFとMETの結合を阻害するペプチド「HiP-8」を発見し、高速原子間力顕微鏡による観察で、HiP-8の作用機序を調べました。その結果、HiP-8はHGFに結合してその作用を強く阻害することを確認しました。さらにHiP-8を投与したがんモデルマウスの体内にあるがん組織を、PETイメージングで可視化できることも実証しました。
HGFとMETの結合を阻害する新しい分子標的薬の開発も期待できます。