「液体のり」の主成分で造血幹細胞の培養に成功、白血病治療へ期待

文:がん+編集部

 液体のりの主成分で、造血幹細胞を未分化のまま数か月培養できることがわかりました。ドナーから1個の造血幹細胞さえ分離採取できれば、複数の患者が治療できる可能性があります。

幹細胞治療や再生医療への応用、医療コストの軽減に期待

 東京大学は5月30日に、液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)という化学物質が、高価な血清成分やアルブミンの代わりに、造血幹細胞を未分化のまま数か月培養可能であることを明らかにしたと発表しました。大学医科学研究所の山崎 聡特任准教授を中心とした研究チームらによるものです。

 造血幹細胞は、血液疾患を根治する骨髄移植(造血幹細胞移植)に欠かせない細胞です。研究チームは、白血病を含む血液疾患患者さんへの応用を目指し、造血幹細胞を生体外で培養する技術開発を進めていました。マウスの造血幹細胞を使った研究で、ウシ血清成分や精製アルブミン、組換えアルブミンが、細胞を培養するときに、造血幹細胞の安定的な未分化性を阻害していることを突き止めました。精製アルブミンや組み換えアルブミンには、精製過程でどうしても取り除けない微量の混入物が残存しまい、その混入物が造血幹細胞自身を分化する方向へ誘導してしまうのが原因でした。そこで、研究チームは、アルブミンを他のタンパク質ではなく、化学物質に置き換えることで、この問題を解決しようと考え、液体のりの成分であるPVAが代替となることを突き止めました。

 この方法を確認するために、マウスから造血幹細胞を1つ採取し1か月間培養させた後、放射線照射による骨髄破壊的処置をしたマウスに移植しました。その結果、すべてのマウスで、移植した増幅造血幹細胞の骨髄再構築が確認できたそうです。

 造血幹細胞を生着させるには、骨髄破壊的処置を行うか大量の造血幹細胞の移植を行うかが必要といわれています。今回発見された方法を使うことで、少ない造血幹細胞から十分量の造血幹細胞を培養することが可能となるため、骨髄破壊的処置を行わずに安全で容易な造血幹細胞移植ができる可能性があります。

 まだ動物実験の段階ですが、この培養法はヒト造血間細胞でも応用できる可能性があり、白血病を含む血液疾患への次世代幹細胞治療として期待されます。また、PVAは日常的に使われている安価な化学物質で、容易に入手できることから、幹細胞治療のコスト削減にも期待されます。