【連載:免疫とがん】第1回 免疫の基本、がん治療に関わる「Tリンパ球」と「Bリンパ球」とはいったい何で、その役割とは?

提供元:P5株式会社


※がんの免疫療法は、研究開発中であり、治療法としてエビデンスが十分確認されていない話も含まれています。

がんの治療を理解するときに「免疫」という言葉に出会うことがますます増えてきています。がんを攻撃してくれる免疫とはいったい何なのでしょう。免疫の基本を理解したうえで、がん治療における免疫の今を連載で見ていきます。 まずは免疫の基本として、「リンパ球」と呼ばれる、免疫の中心となる細胞について解説していきます。 さらに、次回以降では、免疫や免疫療法について確認し、免疫チェックポイント、オプジーボ、キイトルーダ、CARTといった新しい治療についてお伝えしていきたいと思います。

そもそもリンパ球とは何?

免疫とは、自分にとって危害になる異質なものを排除して、体を正常な状態に保つ機能のことです。その免疫で中心的な役割を果たしている細胞がリンパ球となります。リンパ球は、自分と自分ではないものを区別し、自分ではないものを“攻撃”する働きがあります。がんを攻撃しているのもこのリンパ球です。

血液の中で白血球と呼ばれるもののうち、約3割がリンパ球です。ちなみに、リンパ球以外で最も多いのが「好中球」と呼ばれる白血球で全体の6割を占めます。この白血球は炎症に関係しています。ほかの白血球としては、「好酸球」「好塩基球」「単球」と呼ばれるものが存在しています。リンパ球も含めて、白血球は、骨の中の骨髄で作り出されます。

リンパ球は、成人の血液中1μL(μは100万分の1)当たり7000個ほどが存在しています。人の血液の重さは、体重の13分の1となっており、60kgの人ならば4.6kgほどの血液があることになります。ここから計算すると、リンパ球は少なくとも約350億個も存在することになります。しかも、骨髄やリンパ節、脾臓には、リンパ球が貯蔵されているので、実際にはもっと多くのリンパ球を体の中に持っていることになります。

リンパ球はさまざまな役割の異なる細胞へと成熟していきます。まだ機能のないリンパ球である「ナイーブ細胞」、攻撃を担う「エフェクター細胞」、ほかの細胞を助ける「ヘルパー細胞」、ほかのリンパ球の働きを抑える「レギュラトリー細胞」といったものがあります。

いくつかのタイプの細胞が互いに協力し合うような関係になっている大きな理由は、リンパ球が間違って自分自身を攻撃せずに、異質なものを攻撃するためです。

異質なものを直接攻撃するT細胞

このようにさまざまな役割に成熟していくリンパ球の中でも重要なのが「T細胞」と「B細胞」と呼ばれる2種類のリンパ球です。リンパ球の7割は胸の前にある器官、胸腺という場所で成熟してT細胞と呼ばれるタイプのリンパ球になります。一方で、一部のリンパ球は、骨髄の中で成熟してB細胞と呼ばれるタイプのリンパ球になります。

T細胞とB細胞は、いずれも異質なものを排除するために働いています。しかし、その働き方は大きく異なっているので、その辺りをさらに見ていきましょう。

T細胞は、抗原レセプターを細胞の表面に出すような形になっています。

T細胞は、異常を起こした細胞を見つけ出して破壊する役目を持ちます。そうした役目を持つT細胞のことを「キラーT細胞」と呼んでいます。例えば、自分の細胞が感染を受けて変化したり、がんになって変化したりしたときに、T細胞はそのような異質な細胞を見つけ出して、攻撃を仕掛けます。このキラー細胞が、がんを免疫でやっつけるときの主役です。

キラーT細胞が攻撃力を発揮できるか否かは、異常をいかに察知できるかにかかっています。そうした異常を察知するT細胞の機能を高める仕組みがあります。それが異常を教える役目を持つ「ヘルパーT細胞」と呼ばれる細胞の役割です。

「抗体」を作り出すBリンパ球

B細胞の大きな役割は「抗体」を作り出すことです。

リンパ球にとって、自分と自分ではないものを区別する目印のことを「抗原」と言います。リンパ球は、この抗原との間で鍵と鍵穴のようにぴったり合う「抗原レセプター」と呼ばれるものを持っています。

1つのリンパ球は、1種類の抗原レセプターしか持ちません。数多くの抗原に対応した抗原レセプターを持つリンパ球が存在しています。1億種類の抗原があれば、1億種類のリンパ球が存在します。

「遺伝子の再編成」と呼ばれる仕組みで、様々な抗原に対応するリンパ球が作り出されています。

B細胞の特徴は、自分の抗原レセプターを大量に作り出すことにあります。抗原レセプターを大量に作り出して、細胞の中にとどめることなく、細胞の外に放出させます。この放出された抗原レセプターのことを「抗体」と呼びます。

B細胞によって作られた大量の抗体は、体の中の自分ではないものに結合していきます。こうして体の中で、自分でないものに一挙に「目印」が付くことになります。

その目印によって、抗体が付いた自分ではないものは排除されていきます。例えば「食細胞」と呼ばれる異質なものを消化する働きのある細胞が攻撃できるようになります。さらに、抗体は毒素に結合したときには、毒素を無害化するような効果も持ちます。抗体が侵入したウイルスにとりつけば、ウイルスの感染力を奪うような変化を起こします。

がんに対する抗体を薬として開発することにより、がんの治療にも応用されています。

ナチュラルキラー細胞などの自然免疫

T細胞やB細胞が担う免疫機能は、異質なものを特異的に認識して、攻撃力を新たに獲得するところから「獲得免疫」と呼ばれています。

一方で、そのような新たに攻撃力を獲得するのではなく、ウイルスに感染したり、がんになったりして、ストレスを受けた細胞を攻撃できる性質を元から持っているリンパ球もあります。「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」と呼ばれるものです。異質な細胞を攻撃する仕組みには、先ほど出てきた「食細胞」や、細菌や異質な細胞を破壊する「補体」と呼ばれるものもあります。このような仕組みは、自然に備わっている異質なものを攻撃する免疫であるところから「自然免疫」と呼ばれています。

  • 参考文献1 矢田純一著 『医系免疫学 改訂14版』 中外医学社. 2016.
  • 参考文献2 アーサー・C・ガイトンほか原著. 御手洗玄洋総監訳. 小川徳雄ほか監訳. 『ガイトン生理学原著第11版』エルゼビア・ジャパン. 2010. 日本赤十字社

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