造血幹細胞移植患者さんを対象に、CMV感染におけるmaribavirを評価したAURORA試験の結果を発表
2023/01/19
文:がん+編集部
造血幹細胞移植後の患者さんを対象に、サイトメガロウイルス(CMV)感染の治療薬として、maribavirとバルガンシクロビルを比較したAURORA試験の結果が発表されました。主要評価項目は未達でしたが、maribavirの臨床的に意味のある持続的な有効性が示されました。
maribavir、主要評価項目は未達ながら臨床的に意味のある持続的な有効性を示す
武田薬品工業株式会社は2022年12月20日、造血幹細胞移植患者さんを対象に、CMV感染におけるmaribavirを評価したAURORA試験の結果を発表しました。
AURORA試験は、造血幹細胞移植後の患者さんを対象に、CMV感染の治療薬として、maribavirとバルガンシクロビルを比較した第3相試験です。主要評価項目は、治療期終了時(8週目)における、バルガンシクロビルと比較したmaribavirの投与後にCMV血症の消失が確認された患者さんの割合でした。重要な副次的評価項目は、投与終了から8週後の16週目に、8週目に達成したCMV血症の消失および症状コントロールを維持した患者さんの割合でした。
事前に規定した非劣性マージンである7%に基づき、バルガンシクロビルとの非劣性を検討した主要評価項目を満たさなかったものの、maribavirがCMV血症の消失における臨床的に意味のある有効性が示されました。CMV消失を達成した患者さんの割合は、maribavir69.6%、バルガンシクロビル77.4%でした。
治療期終了後の16週目において、8週目からのウイルス血症の消失および症状コントロールの維持効果を達成した患者さんの割合は、maribavir52.7%、バルガンシクロビル48.5%でした。
また、maribavirによる維持効果の持続については、治療期終了後である12週目(maribavir 59.3%、バルガンシクロビル57.3%)および20週目(maribavir 43.2%、バルガンシクロビル42.3%)の治療終了後評価で確認されました。
安全性に関しては、バルガンシクロビルの試験治療下での好中球減少症発現率が高いこと(maribavir21.2%、バルガンシクロビル63.5%)と好中球減少症による投与の早期中止率が高いこと(maribavir4%、バルガンシクロビル17.5%)から、maribavirの良好な安全性プロファイルが再確認されました。
AURORA試験の治験責任医師であり骨髄移植を専門とする血液学の第一人者で、医学博士、RCPフェローのRafael F. Duarte氏は、次のように述べています。
「造血幹細胞移植後のCMV感染患者さんには、好中球減少症や腎毒性と関連する今日一般的に使用されている従来の抗CMV治療薬よりも忍容性のある治療選択肢が必要です。AURORA試験において、maribavirが造血幹細胞移植患者さんに臨床的に意味のある持続的なCMV血症の消失をもたらす可能性があることが示されたことを非常に嬉しく思っています。AURORA臨床試験チームを代表して、本試験の実施に携わられた患者さん、介護者、臓器ドナーの皆様全員の他者を助ける高潔な献身に心からの感謝を申し上げます」