頭頸部がんの治療選択

頭頸部がんの治療方針は、発生した部位ごとに異なります。部位ごとの治療選択を紹介します。

口腔がん(舌がん)の治療選択

 口腔がんでは、すべての進行度で「手術」が標準的な治療です。T1~2でリンパ節転移がない場合、原発巣切除と必要に応じて頸部郭清術が行われます。T1~2でリンパ節転移がある場合と、T3以上では、原発巣切除と頸部郭清術が行われます。

 T1~2でリンパ節転移がない場合と表在性のT3でリンパ節転移がない場合は、組織内照射(小線源療法)が行われることがあります。組織内照射で腫瘍が残存した場合は、原発巣切除と頸部郭清術が選択されます。

 手術後は、必要に応じて術後補助療法として、シスプラチンによる化学療法、もしくは化学放射線治療が行われることがあります。

口腔がん(舌がん)の治療選択
口腔がん(舌がん)の治療選択
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-1口腔癌(舌癌).病期診断より作成

上顎洞がんの治療選択

 上顎洞がんは、腫瘍の進展範囲によっては、発生する部位が視神経や脳幹に近いため、治療に際しては、根治性とともに整容面、機能面が考慮されます。そのため、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。

 具体的には、腫瘍の進展範囲に応じて、「上顎部分切除」「上顎全摘術」「上顎拡大全摘術」「頭蓋底手術」が行われます。また、進行度とリンパ節転移の有無により、放射線治療や化学療法が必要に応じて行われます。

上顎洞がんの治療選択
上顎洞がんの治療選択
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-2上顎洞癌.病期診断より作成

上咽頭がんの治療選択

 上咽頭がんは、低分化・未分化がんが多く放射線感受性が高いことから、ステージ1~4A期では、放射線治療を基本として、必要に応じて化学療法が追加されます。

 遠隔転移があるステージ4Bの患者さんに対しては、化学療法の放射線増感効果が期待できることから、全身状態が良好の患者さんに対しては、放射線治療に化学療法を併用する化学放射線療法が積極的に考慮されます。

上咽頭がんの治療選択
上咽頭がんの治療選択
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-3上咽頭癌.病期診断より作成

中咽頭がんの治療選択

 T1、T2の患者さんでは、放射線治療や経口的切除術で根治できることも多く、その場合は術後の機能障害も比較的少なくすみます。放射線治療や手術の後は、必要に応じて頸部郭清術や放射線治療、化学放射線治療が行われます。

 T3、T4の患者さんでは、化学放射線療法もしくは原発巣切除術が行われます。治療後、腫瘍残存やリンパ節転移の状態により、必要に応じて頸部郭清術、放射線治療、化学放射線治療が行われます。

中咽頭がんの治療選択(T1、T2)
中咽頭がんの治療選択(T1、T2)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-4中咽頭癌.病期診断より作成
中咽頭がんの治療選択(T3、T4)
中咽頭がんの治療選択(T3、T4)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-4中咽頭癌.病期診断より作成

下咽頭がんの治療選択

 早期の下咽頭がんに対しては、喉頭温存を目指し、根治照射あるいは喉頭温存手術のいずれかが選択されます。進行期の下咽頭がんに対しては、手術が行われますが、喉頭の切除が伴うことが多いため、再建手術が行われます。QOLを保つため、化学放射線治療や喉頭温存手術が行われることもあります。

 また、喉頭温存を目的に導入化学療法が行われることがあります。導入化学療法の効果が認められた場合は、放射線治療と、必要に応じて化学療法が行われます。腫瘍の残存が認められた場合は、手術が行われます。導入化学療法の効果が認められなかった場合は、下咽頭・喉頭全摘術、頸部郭清術が行われ、必要に応じて術後補助療法が行われます。

下咽頭がんの治療選択(T1、T2)
下咽頭がんの治療選択(T1、T2)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-5下咽頭癌.病期診断より作成
下咽頭がんの治療選択(T3、T4)
下咽頭がんの治療選択(T3、T4)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-5下咽頭癌.病期診断より作成
下咽頭がんの治療選択(導入化学療法)
下咽頭がんの治療選択(導入化学療法)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-5下咽頭癌.病期診断より作成

喉頭がんの治療選択

 ステージ1~2の早期がんに対しては、放射線治療あるいは、喉頭温存手術のいずれかが推奨されています。進行している場合は、年齢、全身状態、患者さんの希望などを考慮して、喉頭機能温存治療または喉頭全摘出術が選択されます。

 また、喉頭温存を目的に導入化学療法が行われることがあります。導入化学療法の効果が認められた場合は、放射線治療と、必要に応じて化学療法が行われます。腫瘍の残存が認められた場合は、手術が行われます。導入化学療法の効果が認められなかった場合は、喉頭全摘出術、頸部郭清術が行われ、必要に応じて術後補助療法が行われます。

喉頭がんの治療選択(Tis、T1)
喉頭がんの治療選択(Tis、T1)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-6喉頭癌.病期診断より作成
喉頭がんの治療選択(T2)
喉頭がんの治療選択(T2)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-6喉頭癌.病期診断より作成
喉頭がんの治療選択(T3)
喉頭がんの治療選択(T3)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-6喉頭癌.病期診断より作成
喉頭がんの治療選択(T4a、N0~3)
喉頭がんの治療選択(T4a、N0~3)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-6喉頭癌.病期診断より作成
喉頭がんの治療選択(導入化学療法)
喉頭がんの治療選択(導入化学療法)
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-6喉頭癌.病期診断より作成

唾液腺がん(耳下腺がん)の治療選択

 唾液腺がんの初期治療は、すべてのステージで手術が行われます。がんの進展範囲により、「部分切除術」「葉切除術※」「全摘術」「拡大全摘術」から選択されます。必要に応じて頸部郭清術、術後補助療法が行われます。

※耳下腺は、耳の前から下の比較的皮膚の浅い位置にある浅葉と、顎の骨の裏側の深いところにある深葉の2つの部分に分けられます。葉切除は、葉ごとに切除する手術です。

唾液腺がん(耳下腺がん)の治療選択
唾液腺がん(耳下腺がん)の治療選択
出典:日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.III-B-8唾液腺癌(耳下腺癌).病期診断より作成

参考文献:
日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.金原出版
日本頭頸部癌学会編 頭頸部癌取扱い規約 第6版[補訂版]

最新のがん医療情報をお届けします。

無料で 会員登録
会員の方はこちら ログイン