頭頸部がんの基礎知識
頭頸部がんとはどんな病気なのか、症状、罹患率、生存率など基礎知識を紹介します。
頭頸部がんとは
頭頸部がんは、頭蓋底部から鎖骨上部までにある口腔、咽頭、喉頭、鼻・副鼻腔(上顎洞)、唾液腺、甲状腺、頸部食道などに発生するがんの総称です。頭頸部がんは部位ごとに、「口腔がん」「鼻・副鼻腔(上顎洞)がん」「咽頭がん」「喉頭がん」「唾液腺がん」「甲状腺がん」「頸部食道がん」に分類されます。
口腔、咽頭、喉頭、鼻・副鼻腔に発生するがんのほとんどは、表皮に存在する「表皮角化細胞」と呼ばれる細胞ががん化した、扁平上皮がんという組織型です。
頭頸部がんの種類
口腔がん | 舌がん、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がん、口蓋がん |
咽頭がん | 上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん |
喉頭がん | |
鼻腔がん | |
副鼻腔がん | 上顎洞がん、篩骨洞がん、蝶形骨洞がん |
唾液腺がん | 耳下腺がん、顎下腺がん、舌下腺がん |
甲状腺がん | |
頸部食道がん |
頭頸部がんの特徴
頭頸部がんは、同時性と異時性を含めて別部位に重複して発生しやすいという特徴があります。頭頸部がん(唾液腺がんを除く)の18.6%に同時性重複がんが認められたとの調査報告があります(頭頸部悪性腫瘍全国登録の2012年5年後予後調査)。
同時性重複がんは、下咽頭がん、中咽頭がん、口腔がんの順で多く、重複がんの発生部位は、食道に最も多く認められています。異時性重複がんは、頭頸部がんの約20.3%で認められ(同上の調査による)、重複がんの発生部位は頭頸部に最も多く認められています。
頭頸部がんの症状
頭頸部がんの症状は、発生した部位により異なります。口腔がんでは「治らない口内炎症状」、咽頭がんでは「のどの違和感」、喉頭がんでは「声のかすれ」、鼻・副鼻腔がんでは「鼻血」、唾液腺がんでは「耳の下や前部の腫れや痛み」などの症状が起こることがあります。
早期では症状が少ないため、進行した状態で見つかることが多くあります。
頭頸部がんのリスク因子
頭頸部がんのリスク因子として、「喫煙」や「過度の飲酒」が知られています。また、中咽頭がんでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、上咽頭がんでは、EBウイルスの感染が、発症に関わっていることも知られています。
頭頸部がんの罹患率と生存率
全国がん登録の全国がん罹患データ2019年によると、新たに頭頸部がん(甲状腺がんを除く)と診断された人は、男性1万6,463人、女性7,208人、合計2万3,671人で、男女比が約2倍強でした。2020年に頭頸部がんのうち口腔がん・咽頭がんで亡くなった人は、男性が5,547人、女性が712人で、喉頭がんで亡くなった人は、男性が5,547人、女性が69人でした。
2009年~2011年に何らかのがんと診断された人全体の5年相対生存率は、64.1%でした。一方、頭頸部がんのうち口腔がん・咽頭がんに限って見ると、5年相対生存率は男性60.7%、女性69.4%でした。喉頭がんの5年相対生存率は男女ともに81.8%でした。
口腔がん・咽頭がんの進行度による5年相対生存率(2009~2011年診断)は、以下の通りです。
- 限局:86.6%
- 領域:53.5%
- 遠隔:13.9%
喉頭がんの進行度による5年相対生存率(2009~2011年診断)は、以下の通りです。
- 限局:93.7%
- 領域:54.0%
- 遠隔:14.5%
限局:原発臓器に限局している
領域:所属リンパ節※転移(原発臓器の所属リンパ節への転移を伴うが、隣接臓器への浸潤なし)または隣接臓器浸潤(隣接する臓器に直接浸潤しているが、遠隔転移なし)がある
遠隔:遠隔臓器、遠隔リンパ節などに転移・浸潤がある
※原発巣と直結したリンパ経路をもつリンパ節の集まり
※各がんのがん罹患率、生存率の最新情報は、がん情報サービス「がんの統計」をご参照ください。
参考文献:
日本頭頸部学会 頭頸部癌診療ガイドライン2022年版.金原出版
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2020)
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書