【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年7月7日)
2025/07/07
文:がん+編集部
子宮を摘出することなく子宮頸がんを治すための新たな治療法の開発を開始
岡山大学は2025年6月17日、子宮摘出を余儀なくされていた子宮頸がんの患者さんを対象に、子宮を摘出することなくがんを治癒させ子宮を温存するための新たな治療法を開発する臨床研究を開始したと発表しました。
今回の研究では、これまで子宮摘出が必要とされてきたステージ1B2・1B3(転移がなく、2cm以上のサイズの腫瘍を有する)の子宮頸がんの患者さんに対し、術前の抗がん剤投与で腫瘍を縮小させた後に子宮頸部円錐切除術、腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清を行います。無事に子宮を温存できた患者さんの割合、2年以内に再発した患者さんの割合、妊娠・分娩に至った患者さんの割合などで、この治療法の有効性・安全性が評価されます。
同様の試みは、ヨーロッパでは散発的に行われてきましたが、きちんとした臨床研究として安全性を担保した上で実施するのは世界初です。この治療法が確立すれば、子宮頸がんに罹患した若年の患者さんが将来の妊娠の機会を失うことを防ぐことができる治療法として期待されます。
EGFR陽性非小細胞肺がんに対するタグリッソの薬剤耐性メカニズムを解明
金沢大学は2025年6月24日、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんが、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ)に耐性を獲得する主な原因として、ARID1Aの遺伝子変異を特定したことを発表しました。
EGFR陽性非小細胞肺がんに対する薬物治療として、オシメルチニブは一時的に高い効果を示しますが、数か月から1年以内に耐性が生じ、多くの患者さんで、がんが再び進行することが問題となっています。
研究グループは、オシメルチニブに耐性を示したがん細胞を詳細に解析し、ARID1A遺伝子変異が耐性化の原因であることを明らかにしました。さらに実際の患者さんのデータを調査した結果、ARID1A変異がある患者さんでは、オシメルチニブの治療効果が低下し、予後も不良となることが判明。新たな治療法を探索した結果、WEE1を標的とする薬(WEE1阻害薬)を使用することで、オシメルチニブ耐性となった細胞に再び治療効果を示すことが発見されました。
EGFR陽性の非小細胞肺がん治療において、薬剤耐性を持つ患者さんでも再び治療効果が得られ、生存率向上への貢献が期待されます。
再発・難治性の多発性骨髄腫対象、「タービー+テクベイリ」併用療法を評価したRedirecTT-1試験の結果発表
Johnson & Johnsonは2025年6月15日、RedirecTT-1試験の結果を発表しました。
RedirecTT-1試験は、EMD(骨組織に隣接しない軟部組織/臓器の形質細胞腫)を有し、3つの標準的な治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、二重特異性抗体「トアルクエタマブ(製品名:タービー)+テクリスタマブ(製品名:テクベイリ)」併用療法を評価した第2相試験です。
解析の結果、「トアルクエタマブ+テクリスタマブ」併用療法の奏効率は78.9%を達成し、高い治療効果を示しました。半数以上の患者さん(54.4%)が完全奏効以上を達成しました。
また、BCMA標的CAR-T細胞療法またはFcRH5標的二重特異性抗体による治療歴がある患者さんにおいても、高い全奏効率が認められました。奏効が認められた患者さんのうち、奏効が持続していた患者さんは66.2%(追跡期間中央値13.4か月)でした。
さらに、同併用療法を受けた患者さんの1年無増悪生存率は61%で、1年時点における奏効持続率は64.1%(奏効期間の中央値13.8か月)、生存率は74.5%でした。全生存期間の中央値は未達でした。