オラパリブの乳がん患者さんへのコンパニオン診断プログラム「BRACAnalysis診断システム」承認

2018/04/04

文:がん+編集部

BRCA遺伝子変異陽性の手術不能または再発乳がんを予定の適応として申請中

 アストラゼネカ株式会社は3月30日、米ミリアド社の「BRACAnalysis診断システム」を外国製造医療機器として国内における製造販売承認を取得したと発表しました。同診断システムは、BRCA遺伝子変異陽性の手術不能、再発乳がん患者さんが、PARP阻害剤オラパリブ(製品名:リムパーザ)の適応があるかを判定するためのコンパニオン診断プログラムです。

 BRACAnalysis診断システムは、BRCAタンパク質の機能欠損を起こす可能性のある遺伝子変異を検出することで、オラパリブの適応対象となる乳がん患者さんを特定します。同診断プログラムでは、患者さんから採取した全血検体を用いてBRCA1またはBRCA2遺伝子のバリアント(DNA配列変化)を検出。検出されたバリアントは、「病的変異」「病的変異疑い」「臨床的意義不明のバリアント(VUS)」「遺伝子多型の可能性」「遺伝子多型」の5つのカテゴリーのいずれかに分類された後、医療従事者宛に判定結果が送付されるとしています。

 同診断システムは、生殖細胞系列のBRCA1/2変異をがあるHER2陰性転移性乳がん患者さんを対象にしたオラパリブの有効性および安全性を医師の選択した化学療法と比較検討した無作為化、非盲検、多施設共同第III相試験(OlympiAD試験)の結果に基づき評価されています。

 OlympiAD試験は、無作為に割付けされた302例のうち299例について同診断システムによる前向きな検査や再検査を実施しました。OlympiAD試験の最大解析対象集団の98%に相当する297例で生殖細胞系列 BRCA(gBRCA)遺伝子変異に関し、病的変異や病的変異疑いであることが確認されました。BRACAnalysis診断システムによるgBRCA遺伝子変異陽性集団の結果は、OlympiAD試験の全体集団302例の結果と同様の結果だったそうです。

  BRCA1/BRCA2は、損傷したDNAの修復に関わるタンパク質を生成するヒト遺伝子で、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たします。これらの遺伝子のいずれかに変異があると、損傷されたDNAが適切に修復されない可能性があり、がんを発症するリスクが高くなります。

 オラパリブは、BRCA変異などのDNA損傷応答経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する治療薬です。日本では2018年1月に白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発患者さんが、PARP阻害剤卵巣がんにおける維持療法を効能・効果として承認されており、アストラゼネカがBRCA遺伝子変異陽性の手術不能または再発乳がんを予定の適応として国内承認申請中です。

 アストラゼネカの上級副社長兼Precision Medicine and Genomics部門責任者のルース・マーチ博士は「弊社はプレシジョンメディシンのリーダーとして、革新的な診断法を提供し、患者さん一人一人が薬剤の恩恵を最大限に享受することに注力しています」とコメントしています。