がん治療と仕事の両立、正しい知識を身につけ自分にあった治療の選択を

文:がん+編集部

 企業や団体でのがん検診受診率の向上などを目的に活動する、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」は7月24日、「放射線治療」をテーマにメディアセミナーを開催しました。同セミナーでは、東京大学医学部附属病院放射線治療部門長で、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長の中川恵一先生による講演や、中川先生と放射線治療を経験された患者さんとのパネルディスカッションが行われました。

放射線治療、「正しい情報を得て自分の価値観で治療選択」を

中川恵一先生
中川恵一先生

 放射線治療は手術や薬物療法と並ぶがんの3大治療法のひとつで、がんの病巣に放射線を照射することで、がん細胞のDNAを傷つけ、細胞死を引き起こします。がんを治すことを目的に単独で行う以外にも、手術や薬物療法といった他の治療と併用して行う場合や、骨転移などによる痛みを和らげることを目的に行う場合があります。放射線治療の効果はがんの種類や病期によって大きく異なり、また、放射線を照射する場所によって副作用の起こり方もさまざまです。したがって、放射線治療を行うかどうかは、患者さんのがんの状態や体調をみて、都度検討します。

 中川先生は講演で、働き世代が治療と仕事を両立するために大切なことのひとつとして、「主体的に正しい情報を得て、自分の価値観で治療を選択すること」を挙げました。しかし、治療に関する正しい情報を得ることは、簡単なことではありません。例えば、治療に関する情報のなかでも、「放射線治療に関する正しい情報は、一般の人たちに十分には知られていない」と中川先生は指摘。よくある患者さんの心配ごととして「放射線を照射することで、がん細胞だけでなく正常な細胞まで傷つけないか?」という内容を紹介し、「放射線治療の照射技術は進歩しており、以前よりもがんの病巣を正確に狙い撃ちできるようになってきました。そのため、健康な組織を傷つけることで起こる副作用は少なくなっています」と、解説しました。また、「放射線治療は多くの場合、通院だけで受けられるため、治療と仕事を両立しやすくなる場合もある」と、述べました。

セカンドオピニオンを受けて治療選択肢の理解を深めた例も

患者さん
(左)大門正博さん (右)藤田聖子さん

 それでは、実際に放射線治療を経験したがん患者さんは、どのようにして治療を選択し、仕事と両立させているのでしょうか。中川先生とがん経験者の方々によるパネルディスカッションで、実際に両立した方々の貴重なお話を聞くことができました。

 まずは、乳がん経験者の藤田聖子さん。藤田さんは、乳がんと診断を受け最初に受診した病院では乳房の全摘を行う手術を勧められました。藤田さんの乳がんの場合は、乳房全摘の他に、乳房の部分切除後に放射線治療を行う治療法も選択肢としてあったため、セカンドオピニオンを受けることを決意されました。セカンドオピニオンを受ける前は、全摘に対する大きな不安で押しつぶされそうになったという藤田さん。セカンドオピニオンにより、全摘と、乳房の部分切除と放射線治療の、それぞれについて理解が深まったそうです。そのおかげで漠然と感じていた不安も減り、結果的にご自身の意思で、部分切除と放射線治療を選択されました。「自分の場合は事前に聞いていた話よりも、あまり心身に負担を感じることなく治療を継続できたため、無事に仕事を続けることができました」と、藤田さん。「(それぞれの治療選択肢について)正しい知識を得たうえで納得して治療を選択できたことも良かったと思います」と述べました。

 続いて、前立腺がん経験者の大門正博さん。大門さんは、前立腺がんと診断を受けた後に、ご自身で治療についてよく勉強されたそうです。その結果、入院せずに通院しながらできる放射線治療があると知り、職場の近くの病院で仕事を続けながら放射線治療を受けたいと考えました。ところが最初に訪れた職場近くの病院では、別の治療選択肢である手術を勧められたため、セカンドオピニオンを経て、放射線治療を受けたそうです。実際に放射線治療を選択して良かったことについては、「1回あたりの治療時間が短いこと」と大門さん。有給休暇を取得しながら、無事に通院だけで治療と仕事を両立することができたそうです。

 中川先生は、「お2人のように主体的に治療選択肢について知ろうとする姿勢が大切」とし、「がん治療と仕事を両立するために、『自分にはどの治療があっているのか』を患者さんご自身でも検討できるよう、正しい情報を得てほしい」と、締めくくりました。