急性白血病に対する臍帯血移植の予後予測因子を解明
2019/08/30
文:がん+編集部
成人急性白血病患者さんを対象とした、臍帯血移植に対する日欧初の国際共同研究で、人種によらない臍帯血移植の予後予測因子が明らかになりました。
移植施設の臍帯血移植経験数が多いほど、日本では生存に有意な影響
京都大学は8月15日、日欧における臍帯血移植の予後予測因子を明らかにしたことを発表しました。同大医学部附属病院の諫田淳也助教、日本造血細胞移植データセンターの熱田由子センター長、ユーロコードÉliane Gluckman教授、欧州血液骨髄移植学会急性白血病ワーキングパーティ― Arnon Nagler教授らの研究グループによるものです。
抗がん剤による治療のみで寛解に至らない、または再発する可能性の高い急性白血病に対する治療において、同種造血幹細胞移植は根治を望める治療法です。しかし、約半数の患者さんでは、適切な時期にHLA (ヒト白血球型抗原)が一致したドナーが見つからないという問題があります。
臍帯血移植は、HLA一致ドナーに代わる代替移植治療であり、HLAは一致しているが血縁者ではない骨髄移植と同等の治療成績が得られる治療法として急速に広まりました。しかし、ほかの移植治療と比べて臍帯血移植は、生着不全や早期の移植関連合併症が高いことが問題となっており、治療成績を改善させるため予後予測因子の解明が求められていました。
研究グループは、2000~2014年の間に、初回の単一臍帯血移植を受けた成人急性白血病患者さん(日本の206施設3,764人、欧州25か国の135施設1,027人)を対象に調査を行いました。年齢、HLA適合度、移植時病期、臍帯血の有核細胞数、抗胸腺細胞免疫グロブリンの使用数など、日本と欧州の患者さんの背景には、非常に大きな差がありました。移植後3年時点での生存率は日本41%、欧州33%。再発率は日本34%、欧州31%と同等でしたが、無再発死亡率は日本29%、欧州40%と欧州の方が高い結果でした。
本研究で、日本と欧州の患者背景や治療内容は大きく異なるものの、同じ予後予測因子を示していたことがわかりました。このことから、統合解析が可能であり、日本と欧州の共同研究を加速させるための重要な基礎データになる可能性があると考えられます。
HLA不適合の影響は、日本では生存には影響はありませんが、再発率の低下や移植関連死亡率の増加と関連することも証明されました。また、日本のほうが条件の厳しい症例に移植を行っているのにも関わらず、良好な成績を残しています。この成績の差が、HLAの影響に関連しているのかどうか、引き続き検討したいと研究グループは考えているそうです。
この発表に際し、研究者は次のようにコメントしています。「本研究は、日本造血細胞移植学会、日本造血細胞移植データセンター、ユーロコード、欧州血液骨髄移植学会との共同研究として、日欧の移植施設から収集した多数の急性白血病の移植データを統合・解析することで実現しました。ご協力いただきました、患者さん、ご家族、臍帯血を提供してくださったお母さん、採取してくださった産科の先生方、移植医療にかかわるスタッフの皆様に心より感謝いたします。患者さんにより良い移植医療を提供するために、そして提供してくださった臍帯血がより輝けるように、日欧共同研究を継続していきたいと思います」。