AI技術+T細胞免疫療法技術による個別化ワクチン開発の治験始まる

2019/11/26

文:がん+編集部

 最先端AI技術を活用したネオアンチゲン予測システムと、T細胞免疫療法技術による個別化がんワクチンの共同開発が始まります。第1相試験では複数種の固形がんを対象にワクチンの評価が行われる予定です。

最先端AIにより個別のネオアンチゲンを特定しワクチン製造

 NECは11月12日、経口T細胞免疫治療の開発に取り組むバイオテクノロジー企業であるVAXIMM(ヴァクシム)社と、ネオアンチゲンによる個別化がんワクチンの新規開発に向けた戦略的な共同治験契約および投資契約を締結したことを発表しました。この契約により、NECは第1相試験への資金提供を行います。ネオアンチゲンとは、がん細胞の遺伝子変異に伴い新たに生まれたがん抗原で、正常な細胞には発現せずがん細胞のみにみられ、またその多くは患者さんごとに異なります。

 同社が開発したネオアンチゲン予測システムは、同社独自の最先端AI技術を活用し、患者ごとに特定されるがん抗原を総合的に評価し、効果的な優先付けを可能にするものです。第1相試験は2020年にVAXIMM社が行い、復数種の固形がんを対象にワクチンの評価が行われる予定です。

 同社執行役員の藤川修氏は、「がんは毎年世界で何百万件もの新たな診断があり、常に人々の健康に対する最も深刻な問題の一つです。NECのコアテクノロジーは個別化療法の開発に適しており、私たちはがん患者さんに効果のある治療法を届けることに全力で取り組んでいきます。VAXIMM社と共に、個々の患者さんに向けた最適な治療法の開発を目指せることを大変うれしく思います」と、述べています。

 VAXIMM社の共同設立者・最高執行責任者ハインツ ルベナウ博士は、「私たちはNECとの今回の提携合意とNECからの強い支援を大変うれしく思います。NECの新しいAI技術は、患者ごとにネオアンチゲンを特定するだけでなく、さらに優先順位付けも行えるため、個々の患者さんへの最適な治療を促進します。NECが患者ごとにネオアンチゲンのリストを作成し、それをもとに私たちの技術を用いて迅速に個別化ワクチンを製造することができます。個別化治療は今日のがん治療における最先端療法であり、今回の共同開発によりこの革新的なアプローチに重要な寄与ができることを期待しています」と、述べています。