がん遺伝子治療、治療遺伝子を細胞に効率よく運ぶ共同研究開始

2019/11/27

文:がん+編集部

 ナノサイズカプセルを用いて遺伝子を細胞に運ぶ、がんの遺伝子治療に関する共同研究が開始されました。

ウイルスを使わず、ナノカプセルで治療遺伝子を運ぶがん治療

 信州大学は11月11日、「生分解性リポソーム」という素材技術を用いて、遺伝子を細胞に効率よく運ぶことで、ウイルスを使わないがん遺伝子治療を可能にする研究を東芝と共同で開始したことを発表しました。同大医学部小児医学教室の中沢洋三教授らと東芝の共同研究です。

 がん遺伝子治療は、治療遺伝子をがん細胞の中に運ぶことで、がん細胞の増殖を抑制したり、がん細胞を強制的に死滅させたりする治療法。現在は、ウイルスを使って治療遺伝子をがん細胞に運んでいますが、安全性や量産性に関して課題があります。研究グループは、がん遺伝子治療を普及させるため、安全で運搬効率がよく、量産が容易な「生分解性リポソーム」を使った遺伝子運搬技術の開発を進めることになりました。

 東芝がもつ素材技術「生分解性リポソーム」は、細胞の中でのみ分解する独自の脂質を主成分としています。また、細胞の細胞膜の特性の違いに応じて、生分解性リポソームを構造設計することで、標的となるがん細胞へ選択的に効率よく運ぶことができ、工業的なプロセスによる量産化が可能になります。

 東芝グループは、「患者さんのがん細胞の特徴に応じた遺伝子の運搬が期待できます。これにより、遺伝子治療の効果の向上、運搬範囲の拡大の実現へ向けた貢献を進めていきます」と、述べています。