進行性固形がん対象の治験「FF-10850」、第1相試験が米国で始まる

2019/12/03

文:がん+編集部

 既存の抗がん薬トポテカン(製品名:ハイカムチン)を新規開発のリポソームで包み、がん組織に薬を選択的に送り、薬効を高める新たな抗がん薬「FF-10850」が開発され、第1相試験が米国で開始されました。

副作用を抑制し、薬効を高めるリポソーム製剤

 富士フイルムは11月18日、進行性の固形がんを対象とした抗がん薬FF-10850の第1相臨床試験を米国で開始したことを発表しました。

 FF-10850は、卵巣がんなどを適応とする既存の抗がん薬「トポテカン」の重篤な骨髄抑制などの副作用を低減し、薬効を高めることを目指したリポソーム製剤です。リポソームとは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子のこと。薬剤をリポソームに内包することで、がん組織にのみ薬剤を選択的に送り届け、抗がん薬の正常細胞への影響を少なくすることで、副作用を軽減し薬効を高めることができると期待されています。リポソーム成分に新規素材を配合しリポソーム膜の強度を高めることで、トポテカンを安定的に内包し、がん組織に届く前に血液中で漏れるという課題を解消しました。

 マウスの実験では、血中での薬剤の安定性の向上および骨髄抑制の低減が確認され、10分の1以下の投与量で同等の有効性が示されています。

 同社は、今後の計画として次のように述べています。「FF-10850、FF-10832のマウス実験で免疫チェックポイント阻害薬との併用投与による生存期間延長を確認し、リポソームを用いた新規がん免疫療法の研究を開始するとともに、次世代医薬品である核酸医薬品や遺伝子治療薬へのリポソームの応用展開を推進しています。また、高品質なリポソーム製剤の安定供給体制の構築に向けて、富士フイルム富山化学の生産拠点に治験薬製造および商業生産を行う工場を建設しており、2020年2月に稼働させる計画です」