エンハーツ、HER2高発現・遺伝子変異の固形がんに対し有効性と安全性を示す

2020/04/09

文:がん+編集部

 HER2遺伝子の変異あるいは高発現がある固形がんに対し、抗体薬物複合体の「トラスツズマブ デルクステカン」(製品名:エンハーツ)の安全性と有効性が示されました。また、HER2遺伝子に変異があるがんは、HER2の高発現を伴わなくてもトラスツズマブ デルクステカンによる治療効果が高いことも示されました。

HER2遺伝子変異がトラスツズマブ デルクステカンによる治療効果の予測に有用

 昭和大学は3月26日、HER2遺伝子の変異あるいは高発現がある固形がんに対し、トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)は安全性と有効性を示し、HER2遺伝子変異が治療効果の予測に有用であるという結論を導いたと発表しました。さらに、HER2遺伝子に変異がある固形がんでは、HER2の高発現がなくてもトラスツズマブ デルクステカンの効果が高いことを突き止めたと発表しました。同大先端がん治療研究所の鶴谷純司教授、米メモリアルスローンケタリングがんセンターのBob Li医師を中心とする研究グループによるものです。

 HER2遺伝子は、がん化やがんの増殖において重要で、「がん遺伝子」と呼ばれる遺伝子の1つです。現在、HER2の高発現がみられる乳がんと胃がんに対しては、抗HER2抗体薬が使われています。しかし、HER2遺伝子の変異はあっても、HER2高発現がみられないがんもあり、それらに該当する肺がん、大腸がん、胆管がん、卵巣がんなどは、抗HER2抗体薬が適応外です。

 今回の研究によりHER2遺伝子変異を有する固形がん、特に非小細胞肺がんでは高い効果が期待できることが証明されました。大腸がん、唾液腺がん、胆道がん、子宮内膜がん、乳がんにおいても、トラスツズマブ デルクステカンが有用である可能性が示されました。

 HER2遺伝子に変異があれば、HER2の高発現がみられない固形がんに対しても治療効果が得られたことから、ゲノム医療の新たな展開が期待されます。

 鶴谷純司教授は、次のように述べています。

 「臓器の種類を超えてHER2を標的とした抗体薬物複合体の効果が証明された。これまでのHER2高発現のみに適応があった抗体薬物複合体がHER2遺伝子変異にも適応されるようになることで、ゲノム医療の発展に寄与する」