レンビマとキイトルーダ併用療法、切除不能な肝細胞がん/進行性腎細胞がんの臨床試験の結果をASCOで発表

2020/06/23

文:がん+編集部

 レンバチニブ(製品名:レンビマ)とペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)併用療法による、切除不能な肝細胞がんおよび進行性腎細胞がんに対する臨床試験の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されました。

116/KEYNOTE-524試験、111/KEYNOTE-146試験ともにレンビマとキイトルーダ併用療法は良好な結果

 エーザイと米メルク社は5月29日、レンバチニブとペムブロリズマブ併用療法による、116/KEYNOTE-524試験と111/KEYNOTE-146試験の結果をASCOで発表しました。

 116/KEYNOTE-524試験は、全身投与歴のない切除不能な肝細胞がん患者さんを対象に、一次治療としてレンバチニブとペムブロリズマブ併用療法を評価した第1b相試験です。レンバチニブは体重60kg以上で12mg、60kg未満で8mgを1日1回、ペムブロリズマブは3週ごとに200mgが投与されました。主要評価項目は、奏効率と奏効期間、副次的評価項目は、無増悪生存期間、無増悪期間、全生存期間でした。

 主要評価項目の最終解析の結果、RECIST1.1 (従来の評価基準)での奏効率は36%で、そのうち完全奏効1%、部分奏効が35%で、奏効期間の中央値は12.6か月でした。治療に関連した有害事象により投与を中止した患者さんが6%、14%の患者さんでレンバチニブ、10%の患者さんでペムブロリズマブの投与が中止されました。

 グレード3以上の有害事象は67%で認められ、グレード4の有害事象(1例)は白血球および好中球の減少でした。また、急性呼吸不全/急性呼吸窮迫症候群1例、腸管穿孔1例、肝機能異常1例の合計3例が、治療との関連が否定できない死亡例として認められました。20%以上に認められた主な有害事象は、高血圧、下痢、疲労、食欲減退、甲状腺機能低下症、手掌足底発赤知覚不全症候群、体重減少、発声障害、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、タンパク尿でした。

 111/KEYNOTE-146試験は、免疫チェックポイント阻害薬の治療後に増悪した転移性の淡明細胞型腎細胞がん患者さんを対象とした、第1b/2相試験です。レンバチニブを1日1回20mg、ペムブロリズマブを3週ごと200mg投与し、許容できない有害事象または病勢進行が認められるまで継続されました。主要評価項目は、24週時点の奏効率、主な副次的評価項目は、約2年間の治療を通じた奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性、忍容性でした。

 今回発表されたのは第2相パートの結果で、2020年4月9日時点のものです。腫瘍免疫療法の効果判定基準(irRECIST)を用いた24週時点の奏効率は51%でした。また、本試験を通じた部分奏効が55%、病勢安定が36%、病勢進行が5%でした。また奏効期間の中央値は12か月、無増悪生存期間は11.7か月、12か月時点での死亡または病勢進行していない患者さんの割合は45%でした。全生存期間の中央値は未達でしたが、12か月時点での生存率は77%でした。

 治療に関連した有害事象により15%の患者さんの投与が中止され、レンバチニブの投与またはペムブロリズマブの投与が中止された患者さんはそれぞれ12%でした。また、48%の患者さんでは減薬を必要とし、グレード4の有害事象は、リパーゼの上昇1例、憩室炎1例、大腸穿孔1例、心筋梗塞1例の合計4例でした。治療との関連が否定できない死亡が2例認められ、それぞれ上部消化管出血1例、突然死1例でした。20%以上で認められた主な有害事象は、疲労、下痢、タンパク尿、発声困難、高血圧、吐き気、口内炎、関節痛、食欲減退、手掌足底発赤知覚不全症候群、甲状腺機能低下症、頭痛でした。

 米メルク社のOncology Clinical ResearchのVice PresidentであるJonathan Cheng博士は、次のように述べています。

 「これらの試験におけるキイトルーダとレンビマ併用療法の奏効率の高さは、肝細胞がんおよび腎細胞がんにおける本併用療法のポテンシャルの高さを裏付けるものです。本併用療法はメルクのがん臨床研究戦略における重要な柱の一つであり、幅広いがん腫およびそのステージによらず当該臨床試験を進めていきます」と述べています。

 また、エーザイの執行役オンコロジービジネスグループ チーフメディスンクリエーションオフィサー兼チーフディスカバリーオフィサーである大和隆志博士は、次のように述べています。

 「レンビマとキイトルーダの併用療法では、複数の進行がんにおいて一貫したヒューマンエビデンスが獲得、蓄積されており、本併用療法による患者さま貢献拡大への我々の熱意と信念がますます強固なものになっています。本併用療法の臨床試験を拡大・継続し、治療が難しいとされたがん患者さまに、最先端のサイエンスに基づく有効な治療法を提供し続けていきます」