多発性骨髄腫に対する「ニンラーロ」を評価した2つの臨床試験結果をEHAで発表
2020/07/17
文:がん+編集部
多発性骨髄腫に対する、プロテアソーム阻害薬イキサゾミブ(製品名:ニンラーロ)を評価した臨床試験の結果が、第25回欧州血液学会(EHA)で発表されました。
TOURMALINE-MM4試験では、病勢進行または死亡リスクを34.1%減少
武田薬品工業は、第25回EHA(6月11日~14日開催)で、多発性骨髄腫患者さんを対象にイキサゾミブを評価した2つの臨床試験「TOURMALINE-MM4試験」と「US MM-6試験」の結果を発表しました。
TOURMALINE-MM4試験は、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫の成人患者さん706人を対象に、イキサゾミブとプラセボを比較した第3相試験です。試験の結果、イキサゾミブは一次療法の維持療法として、主要評価項目である無増悪生存期間を統計学的有意にかつ臨床的に意義のある改善を示しました。無増悪生存期間の中央値は、プラセボ9.4か月に対しイキサゾミブ17.4か月で、病勢進行または死亡リスクを34.1%減少させました。
安全性に関しては、これまでに報告された安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。5%以上で認められた主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢、発疹、末梢神経障害、発熱でした。グレード3以上の有害事象は、イキサゾミブ36.6%、プラセボ23.2%で、有害事象による治療の中止は、イキサゾミブ12.9%、プラセボ8%でした。
アテネ大学医学部でTOURMALINE-MM4試験の主任研究者であるMeletios Dimopoulos医師は、次のように述べています。
「現在承認されている多発性骨髄腫に対する治療選択肢は限られており、新たな維持療法が強く求められています。今回の第3相臨床試験の結果は、維持療法としてプロテアソーム阻害薬の役割を強化するものであり、治療期間を長くすることで奏効期間を延長するだけでなく、奏効を改善することができることを示唆しています。幹細胞移植の対象とならない患者さんは選択肢が限られているため、大きな影響を与える可能性があります」
US MM-6試験は、前治療として非経口剤であるボルテゾミブをベースとした3剤併用療法をすでに受けていた初発の多発性骨髄腫患者さんに対し、イキサゾミブとレナリドミドおよびデキサメタゾンの併用療法へ移行した際の有効性と安全性を評価した試験です。試験の結果、全奏効率は62%から70%に、完全奏効率は4%から26%に改善しました。この結果は、患者さんの生活の質に影響を与えることなく有効性を示唆するデータです。安全性に関しても、予期しない安全性シグナルは認められていません。