食道がんの術後補助療法において「がんペプチドワクチン」の有用性を示す

文:がん+編集部

 食道がんの術後補助療法において「がんペプチドワクチン」の有用性を示した臨床試験の結果が発表されました。5年生存率を約2倍に改善しました。

CTLの浸潤もPD-L1の発現のない患者さんへのがんペプチドワクチン投与で死亡リスクを69%低減

 近畿大学は8月31日、術後にリンパ節転移が確認された予後不良の食道扁平上皮がん患者さんを対象に、術後補助療法としてがんペプチドワクチンを投与した第2相臨床試験の結果、生存率を従来の約2倍に改善できたことを発表しました。同大学医学部外科学教室上部消化管部門の安田卓司教授らの研究チームによるものです。

 今回の臨床試験では、日本人に多い白血球のタイプ(HLA-A2402)に結合しやすく、食道扁平上皮がん細胞に特異的に発現している3種類の抗原ペプチド(URLC10、CDCA1、KOC1)が使用されました。この抗原ペプチドは、がん細胞を特異的に攻撃する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を強力に誘導します。投与されたがん抗原ペプチドは、抗原提示細胞表面のヒト白血球抗原(HLA)を介して抗原提示されます。

 対象は、術前化学療法または化学放射線療法施行後に根治切除術が行われ、リンパ節に転移があるステージ2・3期の進行食道がん患者さんです。HLA-A2402陽性の患者さん33人に対し、がんペプチドワクチン治療を術後2か月以内に開始し、3種類のがん抗原ペプチドを最初の10回は毎週、次の10回は2週間ごとに投与しました。HLA-A2402陰性の患者さん30人は再発が確認されるまで経過観察が行われました。

 試験の結果、無再発生存期間はワクチン接種群で良好な傾向にとどまりましたが、食道がん特異的生存期間(手術後に食道がんが原因で死亡するまでの期間)での5年生存率が、ワクチン接種群60.0%、接種しなかった対照群32.4%という結果で、生存率が約2倍改善しました。また、CTLを誘導したペプチドの個数が増えるに従い再発が抑制され、2種類以上のペプチドでCTLの誘導が確認された患者さんで、生存期間が延長していました。

 さらに研究グループは、どのようなタイプの患者さんで有効かを調べるため、腫瘍内へのCTLの浸潤とPD-L1の発現状況で評価しました。その結果、CTLの浸潤もPD-L1の発現もない患者さんの食道がん特異的5年生存率は、対照群17.7%に対しワクチン接種群は68.0%という結果でした。一方、CTLの浸潤がなくPD-L1の発現がある5人の患者さんでは、ワクチンの効果が認められませんでした。

 このことから、研究グループは次のように推測しています。

 「ワクチンにより誘導されたCTLの効果がPD-L1を介した抑制性シグナルで打ち消されたと推測されました。今回の結果は、確かに誘導されたCTLは予後改善に寄与しているということを示すとともに、PD-L1発現例では免疫チェックポイント阻害薬との併用が有効である可能性も示唆するものとしてがんペプチドワクチン治療の有効性とともに今後の免疫療法の個別化に向けて新たな発展性を示すものとして意義深いと考えています」