リムパーザ、HRR遺伝子変異の転移性去勢抵抗性前立腺がんを対象とした臨床試験で全生存期間を有意に延長
2020/11/02
文:がん+編集部
転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する臨床試験で、BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性でオラパリブ(製品名:リムパーザ)を投与した患者さんに対し、統計学的に有意にかつ臨床的に意義のある全生存期間の延長が認められました。
新規ホルモン剤治療薬と比べ、BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性患者さんの死亡リスクを31%低減
英アストラゼネカは9月20日、相同組換え修復関連(HRR)遺伝子変異のある転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんを対象としたPROfound試験で、エンザルタミド(製品名:イクスタンジ)またはアビラテロン(製品名:ザイティガ)と比較して、BRCA1/2またはATM遺伝子変異がありオラパリブを投与した患者さんでは、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間の延長が示されたことを発表しました。
PROfound試験は、新規ホルモン剤治療薬であるアビラテロンまたはエンザルタミドと比較して、オラパリブの有効性と安全性を評価した試験です。対象は、新規ホルモン剤による治療歴のある進行がんで、かつBRCA1/2、ATMまたはその他12のHRR遺伝子のいずれかに変異が見られる転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者さんです。主要評価項目はBRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性患者さんの無増悪生存期間でした。副次的評価としてHRR遺伝子変異(BRCA1/2、ATM、CDK12およびその他11のHRR遺伝子)がある全患者さんを含めた解析が実施されました。
解析の結果、BRCA1/2、ATM遺伝子変異があるオラパリブで、エンザルタミドまたはアビラテロンに比べ、死亡リスクが31%低減しました。また、HRR遺伝子変異がある全患者さんを含めた探索的解析でも、オラパリブは、エンザルタミドまたはアビラテロンと比較して死亡リスクを21%低減していました。
PROfound試験の治験責任医師の一人で、The Institute for Cancer Researchの医薬品開発部門および王立マースデン病院の責任者であるJohann de Bono氏は次のように述べています。
「PROfound試験においてリムパーザは複数の主要な評価項目で統計学的に有意で臨床的に意義のある有効性を示しており、全生存期間の最終結果から、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの標準治療が変わる可能性がより強固なものとなりました。PROfound試験の結果によって、リムパーザが今後、これまで予後が不良で治療選択肢がほとんどなかった患者さん方に、分子レベルを標的とする治療として、プレシジョン・メディシンという新たな時代の薬剤として、前立腺がんの治療において重要な役割を担う可能性があることを示しています」