トリプルネガティブ乳がんを対象にテセントリクを評価した複数の臨床試験の最新データ、ESMOで発表

2020/11/16

文:がん+編集部

 トリプルネガティブ乳がんを対象に、アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)を評価した複数の臨床試験の結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されました。

早期トリプルネガティブ乳がん対象とした「IMpassion031試験」で主要評価項目を達成

 ロシュ社は9月19日、トリプルネガティブ乳がんを対象に、アテゾリズマブを評価した3つの第3相臨床試験の最新データをESMOバーチャルコングレス2020で報告したことを発表しました。報告された3つの試験の結果は以下の通りです。

 IMpassion031試験は、未治療の早期のトリプルネガティブ乳がん患者さん333人に対し、術前化学療法として、アテゾリズマブ+化学療法併用、または、プラセボ+化学療法併用を比較した臨床試験です。解析の結果、PD-L1の発現状況を問わない患者さんにおいて、主要評価項目の完全奏効率を統計学的有意にかつ臨床的に意義のある改善が認められました。全患者さんの完全奏効率は、アテゾリズマブ+化学療法で57.6%、プラセボ+化学療法で41.1%でした。安全性に関しては、これまでに認められていた安全性プロファイルと一致していました。

 Impassion130試験は、転移性または切除不能な局所進行のトリプルネガティブ乳がん患者さん902人に対し、一次治療として、アテゾリズマブ+パクリタキセル併用、または、プラセボ+パクリタキセル併用を比較した臨床試験です。解析の結果、全患者さん対象の全生存期間では有意差は認められませんでしたが、PD-L1陽性患者さんにに対しては臨床的に意義のある改善が認められ、アテゾリズマブ+パクリタキセル併用において全生存期間(中央値)7.5か月の延長が示されました。安全性に関しては、これまでに認められていた安全性プロファイルと一致していました。

 Impassion131試験は、未治療の手術不能の局所進行性または転移性のトリプルネガティブ乳がん患者さん651人に対し、アテゾリズマブ+パクリタキセル併用、または、プラセボ+パクリタキセル併用を比較した臨床試験です。解析の結果、PD-L1陽性患者さんにおける無増悪生存期間の統計学的有意な延長は認められませんでした。安全性に関しては、これまでに認められていた安全性プロファイルと一致していました。