リムパーザ、BRCA遺伝子陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの適応でCHMPが承認を勧告

2020/11/20

文:がん+編集部

 オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの適応で、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)が承認を勧告しました。

PROfound試験の結果、リムパーザは新規ホルモン剤と比べ病勢進行または死亡のリスクを66%減少

 英アストラゼネカ社と米メルク社は9月21日、相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異のうち、乳がん感受性遺伝子BRCA 1および2(以下、BRCA1/2)変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの治療薬として、オラパリブがCHMPに製造販売承認が勧告されたことを発表しました。今回の肯定的見解は、第3相PROfound試験のBRCA1/2変異陽性の患者さんを対象としたサブグループ解析の結果に基づくものです。

 PROfound試験は、オラパリブを、新規ホルモン製剤治療薬であるアビラテロン(製品名:ザイティガ)またはエンザルタミド(製品名:イクスタンジ)と比較して有効性と安全性を評価した臨床試験です。本試験は、BRCA1/2またはATM遺伝子変異がある患者さんを対象に解析し、オラパリブが有効性を示した場合に、その他12のHRR関連遺伝子変異を含むすべての患者さんを対象に解析するという、2つのコホートで構成されていました。

 BRCA1/2またはATM遺伝子変異がある患者さんを対象とした解析で、新規ホルモン剤と比較してオラパリブは病勢進行または死亡のリスクを66%減少し、主要評価項目である無増悪生存期間を達成したと2019年8月に発表されています。

 アストラゼネカ社のオンコロジー研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselga氏は、次のように述べています。

 「転移性去勢抵抗性前立腺がんと診断された患者さんには残念なことに治療選択肢がほとんどなく、これまで予後は不良でした。今回のリムパーザの承認勧告により、EUでこの疾患に苦しむ患者さんに、全生存期間を延長できる唯一のPARP阻害剤である本剤をお届けすることに、さらに一歩近づくことができました。BRCA遺伝子検査が、EUでの進行前立腺がん患者さんの診断と治療の決定において、今後非常に重要な手順となるはずです」

 また、MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes氏は、次のように述べています。

 「PROfound試験では、BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんにおいて、リムパーザにより臨床的に意義のある有効性が示されました。リムパーザが承認されれば、EUにおいて特定の前立腺がん患者さんに新たな治療選択肢をもたらし、これらの患者さんの治療にパラダイムシフトを引き起こす可能性があります」