難治性卵巣がん、白金製剤に対する薬剤耐性のメカニズムを解明

文:がん+編集部

 難治性卵巣がんの白金製剤に対する薬剤抵抗性の原因が解明されました。

既存の去痰薬併用で、難治性卵巣がんに対する白金製剤の薬剤耐性を克服できる可能性

 慶応義塾大学は3月9日、難治性卵巣がん患者さんにおいて、活性硫黄種の1つ「ポリスルフィド」が果たす役割を解明し、薬剤耐性解除効果を発見したことを発表しました。同大学病院臨床研究推進センターの菱木貴子専任講師、医学部医化学教室の山本雄広専任講師、加部泰明准教授、末松誠教授および日本医科大学大学院医学研究科生体機能制御学分野の本田一文大学院教授、国立がん研究センター研究所の平岡伸介部門長ら研究グループによるものです。

 卵巣がんの治療は、両側卵巣、卵管、子宮などを一括切除後、シスプラチンなどの白金製剤による強力な化学療法が行われます。研究グループが182人の卵巣がん患者さんから得た摘出組織を解析したところ、システインやグルタチオン、硫化水素などの生成酵素の1つであるシスタチオニンγ-リアーゼが高発現していると、白金製剤を主体とした術後化学療法の成績が悪く、生命予後が短くなることがわかりました。

 また、国立がん研究センター・バイオバンクに蓄積されている卵巣がん組織検体の解析から、明細胞がんは漿液性腺がんと比べて、ポリスルフィドが多く検出されていることを突き止めました。ポリスルフィドは、シスタチオニンγ-リアーゼが生成する代謝物質の1つで、化学療法に対する抵抗性を示すことが明らかになりました。

 さらに研究グループは、去痰薬として使用されている既存薬「Ambroxol」に、ポリスルフィドの分解作用があることを解析で明らかにし、腫瘍形成を起こすモデル動物の実験でAmbroxolがシスプラチンの抗腫瘍効果を増強することを確認しました。

 研究グループは研究の意義・今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究の意義は、腫瘍減量手術を受けた際に採取できる凍結卵巣組織ブロックを薄切してできる試料を表面増強ラマン分光顕微鏡で分析することによって、サンプルを標識、染色などの人為的操作を加えずにポリスルフィドが高値の患者を簡便に選別できるようになったことです。またポリスルフィド高値の症例では白金製剤とAmbroxolを併用することによって腫瘍の退縮効果が増強する、すなわち、治療薬耐性の解除が可能であることが示唆されました。このような薬剤併用による抗がん剤の主作用の増強は、将来進行性の卵巣がんの術後化学療法の予後を改善する可能性が示唆され、今後の展開が期待されます」