エストロゲン受容体抑制薬amcenestrant、ER陽性/HER2陰性の乳がんに対し有効性と安全性を示す

2021/06/28

文:がん+編集部

 ER陽性またはHER2陰性の乳がんに対し、エストロゲン受容体(ER)抑制薬「amcenestrant」を評価した臨床試験で、有効性と安全性が認められました。

「amcenestrant+イブランス」併用療法、奏効率34%、臨床的有用率74%

 仏サノフィは5月19日、現在開発中の経口投与可能な選択的エストロゲン受容体抑制薬amcenestrantを評価したAMEERA-1試験で得られた第1相パートのデータを発表しました。

 AMEERA-1試験は、閉経後のER陽性・HER2陰性の転移性乳がん患者さんを対象に、amcenestrant単独療法と「amcenestrant+パルボシクリブ(製品名:イブランス)」併用療法を評価した4つのパートで構成された第1/2相試験です。用量を徐々に増やす(用量漸増)パートAと用量を拡大する(用量拡大)パートBでは、amcenestrant単独療法の最大耐用量を確認されました。パートCとパートDでは、「amcenestrant+パルボシクリブ」併用療法の用量漸増と用量拡大を評価して、第2相試験の推奨用量、および安全性プロファイルの確認を目的に計画されました。

 主要評価項目は奏効率、臨床的有用率で評価する抗腫瘍活性、安全性でした。試験参加基準は、組織検査で局所進行性または転移性のER陽性またはHER陰性乳腺がんと診断され、試験参加前に6か月間以上にわたりホルモン療法を受けた経験がある患者さんで、24か月以上前に開始した術後ホルモン療法の実施中に早期再燃がみられた患者さんや、術後ホルモン療法の終了後12か月以内に再燃がみられた患者さんも対象でした。

 その結果、「amcenestrant+パルボシクリブ」併用療法の奏効率は34%、臨床的有用率は74%でした。「amcenestrant+パルボシクリブ」併用療法の安全性は、amcenestrant単独療法でみられた有害事象と同様で、心臓や目に著しい副作用の兆候は認められませんでした。全グレードの合計では、amcenestrantの有害事象は72%、パルボシクリブの有害事象は90%に現れ、グレード3以上の有害事象はそれぞれ15%と46%に現れました。血液系の有害事象以外で最も高頻度にみられたamcenestrantの有害事象は、疲労(18%)と悪心(18%)でいずれもグレード2以下でした。

 amcenestrantは、経口投与可能なエストロゲン受容体抑制薬。ERに拮抗し分解することで、ERのシグナル伝達経路を阻害します。ER陽性またはHER2陰性乳がんに対する二次治療またはそれ以降の治療における単剤投与、一次治療としてパルボシクリブと併用投与、また、早期乳がん患者さんに対する術後ホルモン療法としての可能性を探索することを目的に開発中です。

 スローンケタリング記念がんセンターの腫瘍内科医のサラト・チャンダルラパティ医師は、次のように述べています。

 「今回の早期臨床データは、amcenestrantとパルボシクリブの併用で有望な抗腫瘍活性が得られることを示しています。心臓や眼に臨床上問題となる所見はみられず、全体としての安全性プロファイルは単剤療法でみられた内容と同様でした。新たな治療選択肢を必要とされているER陽性転移性乳がんの患者さんにおいて、今回認められたデータは、注目に値します」