キイトルーダ、高リスク早期トリプルネガティブ乳がんに対する術前・術後の補助療法として無イベント生存期間を延長
2021/08/17
文:がん+編集部
ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)を、高リスク早期トリプルネガティブ乳がんに対する補助療法として評価したKEYNOTE-522試験の結果が発表。無イベント生存期間が統計学的に有意に改善されました。
「キイトルーダ」レジメン、「化学療法+プラセボ」レジメンと比べ、無イベント生存リスクを37%低下
米メルク社は7月15日、高リスクの早期トリプルネガティブ乳がんに対する術前・術後の補助療法を評価したKEYNOTE-522試験の結果を発表しました。
KEYNOTE-522試験は、高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん患者さん1,174人を対象に、「ペムブロリズマブ」レジメンと「化学療法+プラセボ」レジメンを比較した第3相試験です。
「ペムブロリズマブ」レジメンでは、術前補助療法として「ペムブロリズマブ+化学療法」併用療法を、術後補助療法としてペムブロリズマブ単独療法が行われました。「化学療法+プラセボ」レジメンでは、術前補助療法として化学療法を、術後補助療法として「化学療法+プラセボ」併用療法が行われました。
主要評価項目は完全奏効率、無イベント生存期間です。イベントに関しての定義は、根治的手術ができない疾患進行、局所再発・遠隔転移、新たながんの発生、原因を問わない死亡までの時間とされました。副次的評価項目は完全奏効率(主要評価項目とは定義が異なる)、全患者さんに対する全生存期間、PD-L1陽性患者さんに対する無イベント生存期間、全生存期間、健康関連QOLなどでした。
39か月の追跡期間による4回目の中間解析の結果、「ペムブロリズマブ」レジメンでは「化学療法+プラセボ」レジメンと比較して、無イベント生存期間でのイベントリスクが37%低下し、統計学的に有意で臨床的に意味のある改善を示しました。副次的評価項目の1つ全生存期間の解析では、死亡リスクが28%低下しましたが、統計学的な有意差は今回認められませんでした。引き続き、全生存期間に対する解析は継続されます。安全性に関しては、これまでに報告されている安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。
英国ロンドンにあるBarts Cancer InstituteのCentre for Experimental Cancer Medicine責任者であるPeter Schmid博士は、次のように述べています。
「高リスクの早期トリプルネガティブ乳がんは、診断から5年以内の再発率が高く、新たな治療の選択肢が求められています。KEYNOTE-522試験はキイトルーダによる術前・術後補助療法併用レジメンによる、がんの早期治療の可能性を評価するものです。3年以上の追跡により、期待できる結果が得られています。無イベント生存期間のデータは患者さんにとって心強いものであり、キイトルーダと化学療法による術前補助療法とそれに続くキイトルーダ単独の術後補助療法が、特に進行の速い高リスクの早期トリプルネガティブ乳がんの新たな治療の選択肢となる可能性があります」