卵巣明細胞がんの新たな診断用腫瘍マーカーを開発

文:がん+編集部

 卵巣明細胞がんに対する現行の腫瘍マーカーより、特異度が高い新たな腫瘍マーカーが開発されました。最適な手術方法や治療方針の選択への貢献が期待されます。

卵巣明細胞がんの最適な手術方法や治療方針の選択への貢献に期待

 横浜市立大学は7月28日、卵巣明細胞がんの細胞が作り出す「TFPI2」というタンパク質を測定する新たな検査薬を開発し、共同開発した東ソー株式会社が販売を開始したことを発表しました。同大学術院医学群産婦人科学の宮城悦子教授、平野久名誉教授、先端医科学研究センターの荒川憲昭客員准教授らの研究グループと東ソーの共同研究によるものです。

 卵巣がんの一種である卵巣明細胞がんは、抗がん剤が効きにくく予後不良といわれています。現行の腫瘍マーカー「CA125」で、卵巣明細胞がんを検出することは難しいといわれていました。

 研究グループはこれまでに、卵巣がん細胞の培養液を解析し、卵巣明細胞がんが特徴的に作り出すTFPI2を見出していました。TFPI2を測定する試薬を作製し、婦人科腫瘍の患者さんの検体で解析を行ったところ、卵巣明細胞がんの患者さんの血液中にTFPI2が特異的に高濃度で存在することがわかりました。

 今回開発された「TFPI2」測定試薬を評価するため、外科的治療を必要とする卵巣がん患者さん351人を対象に、国内5施設で臨床試験が行われました。術前に採取された血清中のTFPI2とCA125の分析を行い、難治性の卵巣明細胞がんを含む卵巣がんの診断予測にTFPI2が寄与することが確認されました。

 本研究成果を基に、TFPI2測定試薬は体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得し、保険収載されたことを受けて、東ソー株式会社より発売されました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「TFPI2は簡便な血液検査による卵巣がんの正確な診断、治療法の選択に有用となることが期待されます。また、明細胞がんの発生母地と考えられている良性の子宮内膜症性のう胞のがん化メカニズム解明にもつながることが期待されます。現在、治療に伴う動的変化や再発等の術後フォローアップ研究を複数の協力機関と進めており、TFPI2の実臨床での有用性を引き続き検証していく予定です」