原発性骨髄線維症の新たな発症メカニズムを発見

文:がん+編集部

 血液がんの一種「原発性骨髄線維症」の新たな発症メカニズムが発見されました。

原発性骨髄線維症の病態が明らかとなり、新たな治療法の確立に期待

 東京大学医科学研究所は9月9日、原発性骨髄線維症の新たな発症メカニズムを発見したことを発表しました。同研究所幹細胞分子医学分野の岩間厚志教授、篠田大輔特任研究員、熊本大学の指田吾郎教授、理化学研究所の古関明彦グループリーダーらの共同研究によるものです。

 日本血液学会認定施設へアンケート調査によると、1999~2015年の17年間に780人が原発性骨髄線維症と診断されました。米国の疫学調査での推定発症数は年間10万人あたり0.3人と報告されており、この発症率を日本の人口に換算すると年間新規患者発生数は380 人と推定されます。男女の比率は2対1の割合で、発症年齢のピークは66歳です。

 原発性骨髄線維症は、骨の中にある骨髄が繊維化して固くなる骨髄増殖性腫瘍の1つです。同じく骨髄増殖性腫瘍の1つ慢性骨髄性白血病のほとんどは、「フィラデルフィア染色体」の発生が原因で発症します。原発性骨髄線維症は、フィラデルフィア染色体の発生は認められませんが、「JAK2遺伝子」の異常が約50%、「MPL遺伝子」の異常が3~8%、「CALR遺伝子」の異常が20~30%の患者さんで認められています。

 がん化や増殖に直接かかわるJAK2遺伝子などの「ドライバー遺伝子」が変異を獲得し、さらに付加的な遺伝子変異を獲得することで、がん細胞の増殖能力を獲得し、骨髄の繊維化と造血障害を生じさせます。この過程では異常な造血幹細胞が作り出す巨核球※1や骨髄球※2が、病態の形成や進行に重要な役割をもっていることが明らかになっています。

 研究グループはこれまでに、遺伝子発現を抑制する「ポリコーム抑制性複合体(PRC)」のうち従来型PRC1とPRC2の機能不全が原発性骨髄線維症の病態の増悪に関与することを報告していましたが、異形型PRC1の関与は明らかにされていませんでした。

 今回、研究グループは、異形型PRC1の1つである「PRC1.1」の骨髄繊維症の病態への関与を解明するためにマウスによる動物実験を実施しました。まず、JAK2遺伝子変異を発現しPRC1.1の構成因子を欠損した二重変異マウスを作成し骨髄移植を行いました。移植後のマウスを解析した結果、二重変異マウスはJAK2遺伝子変異のみまたは変異のないマウスと比較して生存期間が有意に短縮し、骨髄と脾臓で顕著な繊維化の進行が確認されました。

 また、二重変異マウスは貧血や血小板減少症が起こり、骨髄球系への分化の促進が認められましたが、PRC2機能不全マウスで認められた巨核球系の増殖は認められませんでした。このことから、PRC1.1はPRC2とは異なるメカニズムで骨髄線維化に関与していることが示唆されました。本研究結果により、原発性骨髄線維症の病態がさらに明らかとなり、新たな治療法の確立に寄与することが期待されます。

※1巨核球:血小板を作り出す細胞。
※2骨髄球:好中球、好酸球、好塩基球など白血球に分化する途中段階の細胞。