がん代謝阻害薬CPI-613、膵臓がんと急性骨髄性白血病を対象とした2つの試験で有効性を示さず

2021/12/06

文:がん+編集部

 転移性膵臓がんと再発または難治性急性骨髄性白血病を対象に、がん代謝阻害薬「devimistat(CPI-613)」を評価した2つの第3相試験の解析結果が発表されました。膵臓がんを対象とした試験では主要評価項目は達成されず、急性骨髄性白血病の試験では、有効性が認められなかったため中止が推奨されました。

CPI-613、化学療法の感受性を高めるがん代謝阻害薬

 米Rafael社は10月28日、遠隔転移がある膵臓がん患者さんを対象としたAVENGER 500試験の最終解析、および再発または難治性の急性骨髄性白血病患者さんを対象としたARMADA 2000試験の中間解析に関する最新情報を発表しました。

 2つの試験は、がん代謝阻害薬devimistatを評価した第3相試験です。Devimistatは、細胞のミトコンドリアの各部分にある細胞の増殖や生存に必要な「トリカルボン酸サイクル」を標的としてがん細胞を選択的に阻害し、さまざまな化学療法薬の感受性を高めます。低用量の化学療法薬とdevimistatを併用することで、一般的に認められる副作用を軽減しつつ有効性を高めることができると期待されています。

 AVENGER 500試験は、未治療の転移性膵臓腺がん患者さん528人を対象に、「devimistat+modified FOLFIRINOX療法」とFOLFIRINOX療法を比較した第3相試験です。最終解析の結果、「devimistat+modified FOLFIRINOX療法」はFOLFIRINOX療法と比較して全生存期間の有意な改善を示さず、主要評価項目を達成できませんでした。

 ウェイン州立大学、Karmanosがん研究所の腫瘍内科医兼治験責任医師であるPhilip Philip医学博士は、AVENGER 500試験の結果に対し次のように述べています。

 「膵臓がんは死亡率が高く、非常に治療困難ながんですが、前相で得られていたdevimistatの有望なデータにより、この後期相の試験に移行することができました。これらは私たち全員が望んでいた結果ではありませんが、諦めることなく、新しい作用機序を有するdevimistatが別の試験で有効性を示すことを期待しています。私たちは、入念にデータを分析し、最善のアクション計画を立て、臨床における本剤の可能性をさらに評価するよう取り組んでいます」

 また、再発または難治性の急性骨髄性白血病患者さんを対象にしたARMADA 2000試験の中間解析の結果、有効性の欠如を理由に独立データモニタリング委員会が試験の中止を推奨しました。

 オーガスタ大学、Georgiaがんセンター長であるJorge Cortes医師は、ARMADA 2000試験の結果に対し次のように述べています。

 「早期の臨床試験データで、急性骨髄性白血病の治療で直面する課題にもかかわらず、肯定的な結果が示されました。私たちは全員、肯定的な結果を期待していました。この試験では私たちの期待が叶えられませんでしたが、別の試験でdevimistatの評価を続けていきます」