EGFR遺伝子変異肺がん、新たな治療法につながるHER3遺伝子の発現異常を発見

2022/02/01

文:がん+編集部

 EGFR遺伝子変異のある肺がんで、HER3遺伝子の発現異常を発見。抗HER3抗体薬物複合体とEGFR阻害薬による併用療法が、新たな治療法として有望な可能性があります。

EGFR阻害薬抵抗性の肺がん、「パトリツマブ デルクステカン+オシメルチニブ」併用療法の有効性を前臨床試験で確認

 近畿大学は2021年12月17日、EGFR遺伝子変異肺がんの新たな治療法につながるHER3遺伝子の発現異常を発見したことを発表しました。同大学医学部内科学教室(腫瘍内科部門)米阪 仁雄講師を中心とする研究チームと第一三共の共同研究によるものです。

 EGFR遺伝子変異肺がんの治療薬として、EGFR阻害薬が広く使用されています。治療開始およそ20か月後に、薬剤耐性が起こる傾向が多くの患者さんでみられます。

 研究チームは、48人のEGFR遺伝子変異肺がんの患者さんの、EGFR阻害薬治療前と薬剤耐性を獲得した腫瘍組織を次世代シーケンサーで、網羅的な遺伝子解析を行いました。その結果、EGFR阻害薬の耐性を獲得したがん細胞では、HER3遺伝子の発現が増加していることが判明。EGFR阻害薬が継続的に投与されたがん細胞では、HER3遺伝子が増加し、HER3遺伝子の発現増加がEGFR阻害薬の耐性要因となっていることがわかりました。

 さらに研究グループは、抗HER3抗体薬物複合体「パトリツマブ デルクステカン」とEGFR阻害薬「オシメルチニブ」の併用実験を実施。がん細胞の増殖を強力に抑制することが認められました。

 現在、第一三共は、EGFR遺伝子変異肺がんを対象に、「パトリツマブ デルクステカン+オシメルチニブ」併用療法に関して、日本も参加している国際共同治験を実施中です。