肝転移に対する免疫チェックポイント阻害薬の新規耐性メカニズムを解明

2022/02/24

文:がん+編集部

 肝転移に対する免疫チェックポイント阻害薬の新規耐性メカニズムが解明されました。新たな免疫療法の開発が期待されます。

乳酸代謝阻害薬の併用で、PD-1/PD-L1阻害薬の治療耐性が改善する可能性

 国立がん研究センターは2022年1月28日、転移病変を始めとした糖の代謝経路が亢進した腫瘍で、免疫チェックポイント阻害薬の治療に耐性が導かれる新たなメカニズムを発見したことを発表しました。同研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野 先端医療開発センター免疫TR分野の西川博嘉分野長、同研究所 細胞情報学分野の間野博行分野長、熊谷尚悟 外来研究員らの研究チームによるものです。

 免疫チェックポイント阻害薬はさまざまながん種の治療で使用されていますが、約20~30%の患者さんでしか治療効果が認められません。研究チームはこれまでに、がん組織に存在するPD-1を発現した制御性T細胞がPD-1/PD-L1阻害薬治療耐性と相関があることを見出して報告してきました。

 今回、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブやペムブロリズマブの治療を受けた悪性黒色腫、肺がん、胃がんの患者さんの組織検体を使い詳細な解析を行いました。その結果、肝転移をはじめとした糖代謝経路が更新している腫瘍では、ブドウ糖が代謝されることで腫瘍内の乳酸濃度が高まり、それに伴う制御性T細胞のPD-1発現が高まることが、PD-1/PD-L1阻害薬の治療耐性につながっていることを見出しました。

 このことから、免疫チェックポイント阻害薬と乳酸の代謝経路を阻害する薬剤を併用することで、PD-1/PD-L1阻害薬の治療耐性を改善することが示されました。

 研究チームは展望として、次のように述べています。

 「これまで、PD-1/PD-L1阻害薬を始めとした免疫チェックポイント阻害薬治療は様々ながん種において、治療効果が証明されてきました。一方で、免疫チェックポイント阻害薬が奏功しない患者さんも多く、治療効果を高める必要があります。特に、肺がんや胃がんの肝転移病変は免疫チェックポイント阻害薬治療が効きづらいことが知られています。本研究により、肝転移病変を始めとした解糖系が亢進した腫瘍においては、乳酸代謝を介して腫瘍浸潤制御性T細胞のPD-1発現が高まり、PD-1/PD-L1阻害薬が奏効しづらくなっていることが明らかになりました。今後、肝転移病変を有する患者さんでは、乳酸代謝経路を阻害する薬剤を併用することで、PD-1/PD-L1阻害薬治療の効果を高められる可能性が期待されます。がん患者さんを対象にした臨床開発に向けて検討を重ね、新たながん免疫治療法への展開を目指します」