頭頸部がんの術後補助療法の新たな標準治療を確立

2022/03/17

文:がん+編集部

 頭頸部がんの術後補助療法の新たな標準治療が確立されました。術後再発リスクの高い頭頸部がん患者さんを対象に、標準治療の「シスプラチン3週毎+放射線治療」と「シスプラチン毎週投与+放射線治療」を比較した臨床試験で、全生存期間の非劣性が示され、副作用がより軽いことがわりました。

「シスプラチン毎週投与+放射線治療」、全生存期間の非劣性が示され副作用もより軽い

 国立がん研究センターは3月2日、術後再発リスクの高い頭頸部がんに対する術後補助療法の新たな標準治療を確立したことを発表しました。日本臨床腫瘍研究グループの頭頸部がんグループによるHNC-Adjuvant CDDP+RT-P3試験の結果に基づくものです。

 HNC-Adjuvant CDDP+RT-P3試験は、局所進行頭頸部扁平上皮がんの術後再発リスクが高い患者さんを対象に、標準治療の「シスプラチン3週毎+放射線治療」と「シスプラチン毎週投与+放射線治療」を比較した第2/3相試験です。第2相パートでは、66人の患者さんが参加し、第3相パートでは261人の患者さんが参加しました。

 第2相の主要評価項目は治療完遂率、第3相の主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無再発生存期間、局所無再発生存期間、無栄養補助生存割合、有害事象などでした。

 第3相パートの2回目の中間解析の結果、3年生存割合はシスプラチン3週毎投与が59.1%、シスプラチン毎週投与が71.6%とシスプラチン毎週投与で良好な傾向を示しました。この結果、「シスプラチン毎週投与+放射線治療」が「シスプラチン3週毎+放射線治療」に比べて全生存期間で劣らないことが証明されました。

 安全性に関しては、シスプラチン毎週投与はシスプラチン3週毎投与と比較して、グレード3以上の好中球減少がそれぞれ35.3% と48.8%、グレード2以上のクレアチニン上昇がそれぞれ5.7%と8.5%、グレード2以上の難聴がそれぞれ2.5%と7.8%、グレード2以上の粘膜炎がそれぞれ50.0%と55.0%など、急性期にみられる副作用が軽いことも示されました。

 JCOGの頭頸部がんグループは、展望として次のように述べています。

 「本試験の結果、シスプラチン毎週投与+放射線治療が標準治療であることがガイドラインに記載され、新たな標準治療となることから、今後患者さんに対してより安全で、エビデンスに基づいた治療を提供することが可能となります。また、シスプラチン毎週投与+放射線治療は、副作用が軽く、外来でも実施可能であることから、今まで術後補助療法を避けてきた患者さんに対しても術後補助療法が適切に実施されるようになり、頭頸部がん患者さん全体の予後改善が期待されます」

試験概要

試験名
JCOG1008: 局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する術後補助化学放射線療法に関するランダム化第II/III相試験 (HNC-Adjuvant CDDP+RT-P3)
対象疾患
局所進行頭頸部扁平上皮がん
実施予定被験者数
260人
試験デザイン
無作為化比較 非盲検 実薬(治療)対照 並行群間比較
試験フェーズ
第2/3相試験
試験薬剤名
シスプラチン
主な参加条件
年齢20~75歳
口腔・中咽頭・下咽頭・喉頭のいずれかに原発巣がある頭頸部扁平上皮がん
術後の診断でステージ3~4B
切除断端陽性あるいはリンパ節外浸潤の術後再発高リスク因子がある
遠隔転移なし
全身状態が良好で十分な臓器機能がある
他のがんに対する治療も含めて、放射線治療、抗がん薬、ホルモン療法いずれも受けた経験がない
主要評価項目
全生存期間(第3相)
治療完遂割合(第2相)
副次的評価項目
無再発生存期間、局所無再発生存期間、無栄養補助生存割合、有害事象、許容治療期間中の非入院治療期間、プロトコール治療開始後90日以内の非入院治療期間