[177Lu]Lu-PSMA-617、進行性のPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの適応でFDAが承認
2022/05/09
文:がん+編集部
進行性のPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの適応で、lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan([177Lu]Lu-PSMA-617)を米国食品医薬品局(FDA)が承認しました。
[177Lu]Lu-PSMA-617は、標準治療と比較して死亡リスクを38%低下
ノバルティスファーマは2022年3月23日、[177Lu]Lu-PSMA-617を進行性のPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの適応で、FDAが承認したことを発表しました。今回の承認はVISION試験の結果に基づくものです。
VISION試験は、アンドロゲン受容体阻害薬とタキサン系化学療法を含む抗がん治療による治療歴があるPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さん831人を対象に、「[177Lu]Lu-PSMA-617+標準治療(医師選択)」と標準治療を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、全生存期間でした。
解析の結果、「[177Lu]Lu-PSMA-617+標準治療」は標準治療と比較して、主要評価項目の全生存期間の改善が認められ、死亡リスクを38%低下。もう1つの主要評価項目である無増悪生存期間の改善も認められました。全奏効率は、「[177Lu]Lu-PSMA-617+標準治療」30%、標準治療2%でした。
安全性に関して、最もよく見られた有害事象は、疲労(43%)、口内乾燥(39%)、悪心(35%)、貧血(赤血球数の減少)(32%)、食欲減退(21%)、便秘(20%)でした。
[177Lu]Lu-PSMA-617は、膜貫通タンパク質である「PSMA」を発現する前立腺がん細胞などの標的細胞に結合し、放射性同位元素からのエネルギー放出によって標的細胞や近傍の細胞が損傷し、細胞の複製能力を阻害および細胞死を誘発する薬剤です。
PSMAの発現を調べるための68Gaによる放射標識後の補完的画像診断薬[68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットもFDAから承認されています。
同社のオンコロジープレジデントであるSusanne Schaffert医学博士は、次のように述べています。
「4つの治療プラットフォームを活用してがんに取り組む当社独自の戦略において、[177Lu]Lu-PSMA-617が、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの治療に向けて、標的化RLTプラットフォームを提供出来ることを喜ばしく思います。本日の承認は、前立腺がんにおけるノバルティスのこれまでの取り組みに基づくもので、深刻な疾患である前立腺がんについては、ノバルティスのイノベーションが患者さんに意味のある違いをもたらし得ると確信しています」